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電源コードが好きな人はいない! ワイヤレス・パワーが登場しています

電源コードが好きな人はいない! ワイヤレス・パワーが登場しています

9 30, 2017

電源コードが好きな人には、まだ会ったことがありません。

キースさんの場合、どこに行くにしても、彼の携帯電話、タブレット端末、コンピュータを確実に動かせるようにするために、図1の写真のように、バックパックにすべての電源関連付属品を詰め込んでいます。キースさんや他の人が気づいていないかもしれないことは、今日、これらのコードのすべてを排除できる技術が利用できるということです。では、ワイヤレス・パワーのソリューションが家庭用の技術になるために、なぜ、これほど時間がかかっているのでしょうか?

キースさんの電源コード「キット」
図1:キースさんの電源コード「キット」。

確かに、無線充電は、かなり長い間、話題になっており、新しい話題ではありません。しかし、最近、送信アンテナ(コイル)と受信アンテナ(コイル)の設計に対する革新的なアプローチが開発され、私たちの電気に頼る生活のために必要なすべての機器に効率的かつ経済的に電力供給するために、ユビキタスなワイヤレス・パワーは、家具、壁、床などを介して生活に組み込む準備が整っています。

普及のための条件設定:競合するワイヤレス・パワー規格

ワイヤレス・パワーを消費者に提供するために、業界の2つの標準化組織が主導しています。無線充電を推進する第1の標準化団体は、電磁誘導充電技術に基づいたQi規格のワイヤレスパワーコンソーシアムWPC)です。第2の団体であるAirFuel™ Allianceアライアンスは、その規格の1つとして高共鳴磁気を利用しています。この高共鳴磁気技術は、範囲の広いワイヤレス・パワーを実現でき、毎日、あらゆる場所でワイヤレス・パワーを提供できる技術です。

誘導充電の主な制限は、送信器と受信器との間で、正確な位置合わせが必要であり、一度に1台の機器しか電力を供給できないことです。電動歯ブラシ、韓国サムスン電子の携帯電話、そして最近ではiPhoneを充電するために採用されたこの技術を市場に初めて出して以来、この技術は、現在のところ、最も消費者に知られています。この技術の2番目の厳しい制限は、機器を充電するために使われる電源を収容する送信器(クレイドルまたは充電スポット)に対して、受信器(例えば、電動歯ブラシや携帯電話)を正確に配置しなければならないことです。これに対して、磁気共鳴技術のAirFuel規格は、送信コイルの表面に置かれていれば、どこでも複数の受信器に同時に電力供給できます。

では、広く普及するアプリケーションは、いつごろ当たり前のものになるのでしょうか?

この技術があれば、すべての家具、携帯電話、テレビ、コンピュータに無線で電力供給できます。そういう場所はどこにありますか? この充電をリードする台湾と中国がその途上にあります。電車や飛行機、自動車の中家具や卓上に、ワイヤレス・パワーの送信器を組み込むこと家具や卓上に、ワイヤレス・パワーの送信器を組み込むことが始まっており、エンド・ユーザーの受信器の導入が加速しています。例えば、米デル社は最近、無線で充電する機能を備えたコンピュータDell 7285 2-in-1 Latitudeを製品化しました(図2参照)。さらに、AirFuelによると現在、世界中で高共鳴磁気が約6000台設置されており、広がり続けていると報告されています。

米デル社のノート・パソコンLatitude 7285 2-in-1は、AirFuel規格に基づいた高共鳴磁気給電ユニット(PTU)を使って無線で充電されます
図2:米デル社のノート・パソコンLatitude 7285 2-in-1は、AirFuel規格に基づいた高共鳴磁気給電ユニット(PTU)を使って無線で充電されます。

しかし、このように一見優れた高共鳴磁気規格の取り込みが、なぜ遅れているのでしょうか?

非常に広い領域にわたる送信面上に直接、受信ユニットを配置するときに、その置き方を気にすることなく、複数の機器に同時に電力を供給できることは、理想です。残念なことに、広い表面(例えば、卓上)にわたって電力を供給することは、実現が驚くほど難しいことが分かっています。この問題は、3つの主な課題に分けることができます:

  1. 複数の機器に同時に電力を供給することは、送信器/受信器の組み合わせに対して、使用するシナリオが無限に考えられます。
  2. 充電領域が広いほど、送信アンテナは大きくなります。残念なことに、アンテナが大きくなるほど、共振外れに敏感になり、伝送効率と送信器システムのコストに大きな影響を与えます(図3参照)。
  3. AirFuel規格の6.78 MHzの伝送信号速度を、コンピュータや卓上灯などの多様な機器を動作させるために十分な電力で制御された電圧に変換する受信器は、あまり効率的ではありません。
磁気共鳴アンテナのサイズが大きくなると、磁界も大きくなるため、範囲内の他の電子機器と干渉する可能性が高くなります
図3:磁気共鳴アンテナのサイズが大きくなると、磁界も大きくなるため、範囲内の他の電子機器と干渉する可能性が高くなります。

大きな表面積にわたって、無線で電力を供給するためのこれらの課題を解決する受信器ユニット

課題番号1の解決、つまり、複数の機器を同時に充電することは、給電器(送信器)と受電器(受信器)の所定の組み合わせを定義することによって、AirFuel規格で対処されています。AirFuelアライアンスで定義された組み合わせの例には、クラス3の給電器(定格16 W)が、カテゴリー3の2個の受電器(定格は各6.5 W)、またはカテゴリー4の1個の受電器(定格13 W)とペアになっています。通常のスマートフォン(受電器)は、カテゴリー3に含まれますが、小型のノート・パソコンは、より大きな電力が必要なので、カテゴリー4に含まれます。

この電力レベルのマッチングは、システムに課される最大電力需要がそのアンプの能力に及ぼす影響を軽減しますが、残念ながら長期的には、消費者のエコシステムの成長に対する基本的なニーズには対応していません。ワイヤレス・パワーのエコシステムの成長をサポートするために、EPCは、ワイヤレス・パワーの最終システムの開発者が最終ユーザーの消費者市場に向けた製品を迅速に設計し供給する助けとなるように、クラス2、3、4の給電ユニット(PTU)用開発キット、カテゴリー3と4の受電ユニット(PRU)用開発キットなど、幅広い製品を開発しています。

課題番号2の解決、つまり、広い表面積をカバーすることができるアンテナ(コイル)を備えることは、誘導技術(Qi)の場合のように、小さくて、明確に規定された1つの場所に電力を供給することが著しく難しくなります。今日、市販されている給電ユニットは、面積が1平方フィート(0.1平方メートル)未満の面積です。問題の核心には、(a)大きなアンテナが全領域にわたって共鳴を維持することが難しいこと、(b)大きなアンテナは、たとえ使用したアンテナのX方向の寸法とY方向の寸法を超える距離であっても電子機器と電磁干渉(EMI)しがちなことがあります。

この問題に対処するために、EPCは最近、革新的で拡張可能な大面積アンテナ(コイル)設計によってワイヤレス・パワー伝送システムにおけるブレークスルーを達成しました。 このアンテナ設計は、AirFuel規格の下で要求される一様な磁界を実現します。さらに、このアンテナ設計は、実質的に、あらゆる形の小さい表面積、または、大きな表面積をカバーするように拡張可能です。

この画期的な技術革新の鍵は、電力伝送に使われる磁界の距離を制限するアンテナ設計でした。従来のワイヤレス・パワー・システムでは、コイル面積が大きくなるにつれて、磁界がインピーダンス・シフトの影響を受けやすくなります。加えて、他の機器と干渉する磁界の放射もサイズと共に増加します。ある点では、大面積は、インピーダンス変動の影響の受けやすさを緩和するためのコストが高いこと、電磁干渉(EMI)規格を満たすことの難しさが増すこと、および、比吸収率(SAR:specific absorption ratio)に関連する人間の安全性の問題に取り組まなければならないことなど、さまざまな理由で望ましくありません。EPCの新しいコイル設計のユニークな構造によって、さまざまなワイヤレス・パワー機器と、その上やその近くに置かれた他の物体との間の干渉がさらに低減されます。

このコイルは、今日利用できる標準的な工程を使って製造することができるので、コストを低く抑えることができます。この新しい設計のアンテナは、ワイヤレス・パワー機器、特に、より大きな電力、および/または、より広い領域を必要とする機器で利用することができます。コイルのインピーダンスが低減されているため、機器の中における無負荷時と全出力時との間の安定化していない電圧変動を低く抑えるために理想的です。この新しい設計のアンテナは、例えば、すべての壁や、床、家具、調理台など、サイズや向きにかかわらず、あらゆる面に拡張できます。

この設計のアンテナを使った伝送システムを、2017年3月に米国フロリダ州タンパで開催された展示会IEEE APEC 2017で初めてデモしました。ワイヤレス・パワーの送信器とアンテナのデモは、卓上灯スマート・スピーカAmazon Echo Dot、ノート・パソコン、コンピュータ・モニター、スマートフォンなど、さまざまな一般的な製品に同時に電力を供給するために不可欠な面積が20インチ×40インチ(0.5 m×1 m)のテーブル・トップでした(図4と図5参照)。

小型で安価なアンテナは、無線で電力が供給される各種負荷の電力受信器として使われます
図4:小型で安価なアンテナは、無線で電力が供給される各種負荷の電力受信器として使われます。
このテーブル・トップのどの機器にも電源コードは必要ありません図5:このテーブル・トップのどの機器にも電源コードは必要ありません。
動作中のテーブル・トップのビデオを見る

重要な注目点は、このテーブル・トップが無線充電を超えて、広い面積にわたって機器に無線で連続的に電力を供給できるということです。このテーブル・トップのデモでは、コンピュータ・モニター、Amazon Echo、卓上灯には電池がありませんが、テーブル・トップの表面の下に置かれた送信器によって直接給電されます。同時に、充電池を備えた携帯電話が充電されています。

このテーブル・トップの例を超えて、磁気共鳴のワイヤレス・パワー技術を拡張するために、柔軟な設計の送信コイルは、物理的に「差し込む」必要がなく、薄型テレビ、スピーカ、壁に掛けられる電灯に電力供給するために、経済的に壁に組み込むことができます。同様に、キッチンのカウンタ上では、水と電気が接触する危険がなく、ミキサー、トースタ、コーヒー・マシンに給電できるプラットフォームになることができます。会議室のテーブルでは、テーブルじゅうに散らばる電源コードの迷宮がなくても、ノート・パソコンに電力を供給し、出席者の電話を充電することができ、近い将来、会議のプレゼンテーションを強化するために使われる拡張現実システムに電力を供給できるようになります。

3つの課題のうちの最初の2つ、すなわち、磁気共鳴による給電に対処する解決策が分かったので、第3の問題である「受電器の効率」が次の課題となります。

EPCは、カテゴリー3のEPC9513 (5 V、5 W)とカテゴリー4のEPC9515(5 V、10 W)の2つのワイヤレス・パワー受電器のデモ・システムを開発しました。これらのシステムには、まもなく、より大きい電力レベルで安定化された19 Vおよび110 Vの出力を生成するさらなるデモ・システムを加える予定です。これらの第1世代システムの効率は約87%でしたが、アーキテクチャやGaN IC技術の今後の改良によって、この値は95%程度に引き上げられるはずです。これらのデモ・システムは、Bluetooth® Low Energy (BLE) 通信を除いて、Airfuel規格で動作します。

電灯からノート・パソコンやタブレット端末まで、あらゆるものに電力を供給することができる幅広い効率的な受電器によって、システム設計者は今、携帯電話の充電機能を備えながら、ワイヤレス・パワー、大面積、効率的なエコシステムの全体を製作するために必要なすべてのツールを持ったことになります。

ワイヤレス・パワーは、プライムタイムへの準備ができています

私たちは今、キースさんと私たち全員を助けることができます・・・私たちは、電源コードを切断し、どこでもワイヤレス・パワーを利用できる準備が整っています! 完全な、ユビキタスなワイヤレス・パワー伝送システムが手近にあります。私たちの家やオフィスは、無線で給電されることができ、最終的には、見苦しく、不便で、時には危険な電源コードを排除できます。

送信および受信のアンテナ(コイル)の設計に対して、EPCが最近開発した革新的なアプローチによって、広い表面積にわたる磁気共鳴のワイヤレス・パワー技術を使えるようになりました。ワイヤレス・パワーの送信システムは、家具、壁、床に組み込まれ、日々の生活の中で使われるすべての受電機能付き機器に効率的かつ経済的に電力を供給ために設計されています。

最後に、電源コードを切断するときが来ました・・・電源コードが好きな人はいません!