GaNの話シリコンを粉砕するために捧げたブログ
GaNが自動運転車用LiDAR(光による検出と距離の測定)の「D(距離)」を見積もるーー「自動運転車の視力」を強化

GaNが自動運転車用LiDAR(光による検出と距離の測定)の「D(距離)」を見積もるーー「自動運転車の視力」を強化

12 05, 2017

そのクルマを見ましたか? その屋根上の鹿の角のように見えるものは何でしょう? ほとんどの人は、公道に関してナビゲートしている自動運転車を見逃すことはないでしょう。ほとんどの人が知っている大抵の自動運転車には、クルマの周囲の情報を知らせる重要な機能を果たす無数のセンサー、カメラ、さらにはレーザーでさえも装備されています。これらのセンサーやカメラは、安全運転のために重要な歩行者、自転車に乗っている人、車線、道路標識、照明、道路の三角コーンや、その他の視覚的な詳細を識別する1つの手段です。

しかし、図1のクルマを注意深く見ると、クルマの上に「目」となるLiDAR光による検出と距離の測定)と呼ばれるレーザー・システムが見えます。このLiDARシステムは、光ビームを操作して高速に照射し、ビームが戻って来る方向と、ビームが戻るまでの時間を評価します。そうすることで、LiDARは、クルマ周辺の360度の高解像度3次元画像を作成します。

LiDAR搭載の自動運転車
図1:クルマの上にLiDARユニットを搭載した自動運転車

自動運転車に、なぜLiDARを使うのですか?

今日のLiDARは、衝突を回避し、自動緊急ブレーキを支援するように設計された自動車アクティブ・セーフティー(予防安全)・システム用の先進運転支援システム(ADAS)・センサーと組み合わせて使われています。これらのADAS機能は、LiDARの画像情報を組み込むことで自動運転車への道筋を牽引していますが、システム・コストが引き続き下がるにつれて、LiDARは主要な「道路への目」になるでしょう。

LiDARは、基本的な画像情報を提供するだけでなく、クルマの環境を監視するための360度の完全な視界を提供することによって、カメラ、レーダー、超音波センサーの重要な冗長機構としても機能します。LiDARは、物体認識、距離推定、および、誤検知の排除において、カメラやレーダーをサポートすることによって、自律性の革新性のレベルをより高めたクルマを展開したい自動車メーカーの信頼を高めることになります。

LiDARはどのように機能しますか?

簡単に言うと、LiDARの3次元画像システムは、レーザーから強くて非常に短い光パルスを発生させ、これが、さまざまな物体から反射され、LiDARセンサーに戻されます。

LiDARセンサーは、x座標とy座標に加えて、パルスが戻るまでの時間を検出することによって計測した物体までの距離を使って、3次元画像を生成します(図2)。光の速度が約0.3 m / nsなので、システムの誤差の1 nsごとに、距離測定に0.3 mの誤差を生じます。したがって、LiDARが速く動作するほど、周囲の画像の解像度が高くなります。これは、技術的な課題です ―― ここにGaNが登場するわけです。

How LiDAR works
図2:LiDARはどのように機能するのか

GaN技術:世界最速のスイッチは、より精細なLiDAR画像を得るカギになります

前述のように、レーザーの速度は、安全な自動運転に必要な非常に解像度の高い画像を得るために重要です。GaN技術は、同等のシリコンMOSFET部品よりもはるかに高速でレーザー信号を発射することができます。図3は、GaNデバイスが、自動運転車のアプリケーション向けに、はるかに高い解像度の3次元マップの作成を可能にする方法を示しています。

LiDAR systems Silicon vs. GaN laser driver
図3:「道路上の目」:シリコンのレーザー・ドライバを搭載したLiDARシステム(左)とGaNのレーザー・ドライバを搭載したシステム(右)の比較

LiDARシステム用の高速光ビームをトリガーするときのおおもとの技術課題は、光のパルスを発射するために必要な電流パルスを生成することです。その物体がハイウエイに沿って走行する車両にとって危険かどうかを判断するために必要な分解能を提供するために、レーザーは、約1 ns以内にピーク電流まで立ち上がらなければならず、遅延時間、スイッチング時間、所望の時間、電流に関して、非常に正確にこのパルスを繰り返さなければなりません。一例として、自動車の検知のような100 mの範囲では、大電流パルスが必要とされます。このトリガー回路の中核には、非常に高速なGaNトランジスタがあります。トランジスタへの要求には、レーザーがシステムを加熱するので、大きなピーク電流、極めて低い容量、および安定した熱特性などがあります。100 VのeGaN® FETであるEPC2016CEPC2001Cは、この要求の厳しいアプリケーションに最適な部品です。

LiDARシステムで、これらの高速GaN FETの評価を加速するために、EPCは、2つの開発基板を提供しています。これらの基板は主に、LiDARシステムをエミュレートするためにレーザー・ダイオードを駆動することを目的としています。図4に示す開発基板EPC9126は、EPC2016Cを搭載し、レーザー・ダイオードに4 nsと短いパルス幅で最大40 Aの電流パルスを流すことができます。

100 VのeGaN FET であるEPC2001Cを搭載したEPC9126HCは、出力電流をより大きくした上で、レーザーのトリガーを高速化するために、より大きな電流能力を必要とするユーザー向けに最大150 Aの定格パルス電流を出力できます。EPC9126HCは、レーザー・ダイオードにパルス幅5 nsと短いパルスで75 Aを供給することができます。

EPC9126 a 100V, high current, pulsed LASER diode driver
図4:全パルス幅4 ns(ピークの50%)でレーザー・ダイオードに40 Aのパルスを供給できるeGaNパワーFET (EPC2016C)を搭載した100 Vで大電流のパルス・レーザー・ダイオード・ドライバのデモ・ボードEPC9126

LiDARの未来

「lidarが最近の記憶の中で最もホットなレーザー対応技術の1つとして浮上したことは公然の事実ですが、驚くべきことは、2〜3年という非常に短い間に、この技術が好奇のグーグル・カーから、主流の運転者のアシスト機能の実装へと進んだことです」。
Alex Lidow(アレックス・リドウ)、CEO(最高経営責任者)で共同設立者、Efficient Power Conversion

LiDAR技術は、自動運転車の「目」として機能する主要な技術として浮上しています。おそらく、この採用状況の最も強力な指標は、トヨタ自動車米グーグル米Lyft米ウーバーテクノロジーズ米ゼネラルモーターズ米フォード・モーターなど、この技術に投資している自動車メーカーのラインナップが拡大していることでしょう。LiDARシステムは、ますます信頼性の高い「目」になり続けており、システム・コストが引き続き減少するにつれて、至る所で採用され、自動車の所有、物流、輸送業界の概念を変えるでしょう。おそらく、あなたが乗る次の車は、GaNベースのLiDARシステムのおかげで、道路を見る「目」を持つことになるでしょう!