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48 Vから1 Vへの変換:ダイレクト・ツー・チップ電源の復活

48 Vから1 Vへの変換:ダイレクト・ツー・チップ電源の復活

7 28, 2017

この記事は、もともとPowerPulse.netのウエブサイトで2017年5月26日に公開されました:8 VからPOL(負荷点)へのeGaN技術とEPCのGaNソリューションの詳細を知ることができます。

先週、ドイツのニュルンベルクで開催されたイベントPCIM Europeでは、主に展示フロアの外で、48 Vから1 Vへの直接電力変換アーキテクチャが大きなトピックでした。米バイコーは、最新世代の48 Vダイレクト・ツー・チップのパワー部品を静かに見せていました。スウェーデンのEricsson Power ModulesEfficient Power Conversionは、48 Vから負荷への直接電力変換アーキテクチャの将来の設計が議論の焦点となる招待者専用の会議を実施しました。2017年末までに、48 Vから1 Vへの直接変換を実現するDC- DCコンバータを製品化するベンダーもあります。

ダイレクト・ツー・チップの電源回路は新しいコンセプトではありません。1980年代、48 Vから5 Vへの変換は、電気通信設備でICに電力を供給するためによく使われたアーキテクチャでした。しかし、ICの動作電圧が5 Vを下回り始めると、ダイレクト・ツー・チップの電源回路は実現不可能になります。この結果、電気通信機器やデータセンターのラックに電力を供給するために、多段の電圧変換を採用するさまざまな中間バス・アーキテクチャ(IBA:intermediate bus architecture)が開発されました。

今日では、デジタル制御ループやGaNパワー・デバイスなどの新しい回路構成や新しい技術によって、再び1 V程度の低いIC電圧でさえもダイレクト・ツー・チップの電源回路アーキテクチャの設計が可能になりました。現代の低電圧、大電流のCPU、GPU、ASIC、DDRメモリーへの48 Vの電力分配バスの供給を遮断するためにこれらのモジュールは、前例のない電力密度、変換効率、電力システムの低分配損失を実現します。

電力変換エンジン、制御システム、モジュール化のパワー技術の進歩を踏まえて、バイコーの最新の48 Vモジュールは、Open Compute Project(OCP)Summit 2016の後に製品化され、このとき、米グーグルは、データセンターの標準として48 Vのサーバーや分配インフラを推進するための第1歩だと発表しました。バイコーの社長兼CEO(最高経営責任者)であるPatrizio Vinciarelli氏は、「48 Vのサーバー・インフラを開発することで、グーグルは、グリーン・データセンターのパイオニアになりました。さらに、同社は現在、48 Vのラック標準の推進によって、世界のクラウドの電力使用量の削減を可能にしています」と述べています。

Ericsson Power Modulesの社長であるMartin Hagerdal氏は、「データセンターのラックは非常に大きな電力を消費していますが、今日の15 kWラックの消費電力は、すぐに40 kWになるでしょう。大きな電力レベルでの直接変換の採用が必須になるでしょう。これによって、より高効率な電力変換、より低損失の電力配分、容易な温度管理、過渡応答の向上、電力変換のための基板スペースの削減、システムの初期コストの低減し、運用コストの削減など、多くのメリットがもたらされます」と語っています。

同氏は、「当社は、今年の第4四半期に、第1世代の直接変換である48 V入力、1 V出力の基板を搭載したdc-dcコンバータを製品化する予定です。これらの設計は、先進的なデジタル・パワー技術によって可能になります。さらに、2018年中には、GaNなどのワイド・バンドギャップ半導体を使った直接変換のdc-dcコンバータを製品化します」とも語りました。

Vinciarelli氏は、「当社は、48 Vのダイレクト・ツー・チップの電力変換のパイオニアです。当社の最新世代の製品は、世代ごとに大幅な改善を見せたVTMおよびPRMのモジュール・ファミリーを拡張しています。実際、過去10年間にわたって、2年ごとに、コンバータの電力損失を平均25%削減すると同時に、電力密度を向上させました。従来の「マルチフェーズ」方式のバック・レギュレータを使ったソリューションと比べると、Factorized Powerは、効率、密度、過渡応答、雑音性能が優れています。サード・パーティが最近、VTMの雑音スペクトラムは、伝統的なマルチフェーズ・レギュレータよりも1桁小さいことを示しています」と述べています。

バイコーはEricssonと同様に、より高いレベルの特性を実現するために、次世代ダイレクト・ツー・チップのDC-DCコンバータにワイド・バンドギャップ半導体の採用を検討しています。

48 V入力、1 V出力の直接変換DC-DCコンバータにGaNスイッチを使うことで、今日の最高のシリコン・ベースの設計と比べて、システム性能を30%向上させることができます」とEfficient Power ConversionのAlex Lidow(アレックス・リドウ)はコメントしています。

さらに、「GaNは、パワーの設計者に効率、密度、コスト、過渡応答で、さまざまな性能の選択肢を提供します。当社では、GaNを使ったいくつかの設計アプローチ、すなわち伝統的な2段の絶縁型IBA、1段のバック・コンバータ、2段の非絶縁型IBA、および、テキサス・インスツルメンツが提案した倍電流回路を備えたトランス・ベースのハーフブリッジなどの性能のトレードオフを分析しました」とも語っています。

「2段の非絶縁型コンバータは、最も高い電力密度と最も低いコストの両方を提供します。一方、非常に密度が劣る倍電流回路アーキテクチャを備えたトランス・ベースのハーフブリッジは、全体的な効率は最も高くなりますが、過渡応答の点で特性が低下し、実質的なコストを犠牲にします」とLidowは述べています。

EPCs 48 volt to 1 volt road map

さらに「当社には、eGaN集積回路のロードマップがあり、より高いレベルの特性が得られるでしょう。モノリシック・ハーフブリッジ、FETを集積したローサイド・ドライバ、レベルシフトとドライバを一緒に集積化したハーフブリッジ、そして最終的には、モノリシックのバックICを開発する予定です」と述べました。

高効率、高密度で、費用対効果が高く信頼性の高い電力分配は、データセンター、自動運転車、LED(発光ダイオード)照明などの分散型電子機器のアプリケーションにとって重要な要素です。より高い分配バス電圧、特に、特別な安全対策を必要としない48 Vの利点(ケーブルやバス・バーの小型化、低い分配損失、蓄積コンデンサの小型化)はよく知られていますが、従来の電力変換手法は、48 Vのバスから、現代のCPUやGPUに要求される低電圧(例えば3.3 V、1.8 V、0.8 V)、大電流に、高効率に、あるいは、小型化して変換することができませんでした。

この結果、CPUの電力変換は、習慣的に12 V分配に依存していました。ただし、12 Vバスは、48 Vバスの4倍の電流を流す必要があります。さらに、分配損失は電流の2乗の関数なので、12 Vバスの電力損失は、48 Vバスの損失の16倍になります。48 Vバスから高効率に分配することは、12 Vの伝統的なソリューションよりも優れており、わずかなスペースで済みます。48 Vのダイレクト・ツー・チップの電力変換によって、システム設計者は、高い変換効率、高い電力密度、低い分配損失が得られるグリーン分散システムのソリューションを実現できます。