eGaN FET電力変換向けに拡大するエコシステム
GaNの話 – Rick Pierson
5 18, 2019
プロローグ
eGaN® FETベースの電力変換システムは、Siベースの代替品に比べて、高効率化、高電力密度化、全体的なシステム・コストの削減が可能です。これらの優れた性能によって、ゲート・ドライバ、コントローラ、特にeGaN FETの性能を向上させる受動部品など、パワー・エレクトロニクス部品のエコシステムがますます拡大しています。eGaN FETの例を図1に示します。
図1:7 mΩ~120 mΩの範囲、および100 V〜350 Vの範囲のeGaN FETの例
eGaN FETのエコシステムの概要
eGaN FETのエコシステムは、1)ゲート・ドライバ、2)コントローラ、3)受動部品の3つの主要な分野に分類できます。図2に示すような標準的な同期整流方式バック(降圧型)・コンバータでは、これらのさまざまな部品がカギになります。これらの部品への要求は、実装面積が小さい、高速スイッチング、ゲート電圧への要件が厳しい、高周波能力などのeGaN FETの特性によって牽引されています。
図2:eGaN FETベースの標準的な同期整流方式バック・コンバータの回路図。eGaN FETのエコシステムの重要な部品を強調しました
eGaN FET用ゲート・ドライバ
ゲート・ドライバICは、eGaN FETのスイッチング能力を最大化するために重要です。eGaN FETに対応させるために、ゲート・ドライバは、5 V駆動に適したUVLO(低電圧ロックアウト)、低プルアップ抵抗、低プルダウン抵抗、小さい実装面積、および高いdv/dtに耐えるための十分な同相過渡電圧耐性(CMTI:common-mode transient immunity)を備えた絶縁に対応していなければなりません。一部のeGaN対応ドライバが備えるこの他の有益な機能には、電圧レギュレータ内蔵、ブートストラップ管理、非常に狭いパルス幅を発生できる能力などがあります。eGaN FETと組み合わせることに適したローサイド・ゲート・ドライバの例が表1です。同様に、表2はハーフブリッジのゲート・ドライバの例です。
米テキサス・インスツルメンツ |
LM5114 |
なし |
汎用 |
EPCに問い合わせ |
米テキサス・インスツルメンツ |
UCC27611 |
内蔵 |
デジタル・アイソレータ付きハーフブリッジでの使用に最適 |
EPC9081 |
米テキサス・インスツルメンツ |
LMG1020 |
なし |
超高速、パルス幅1 ns |
EPCに問い合わせ |
uPI |
uP1964 |
内蔵 |
調整可能な駆動電圧レギュレータ搭載 |
— |
米IXYS |
IXD_604 |
なし |
デュアル・ドライバ、大型FETに対応 |
— |
表1:eGaN FET対応ローサイド・ゲート・ドライバ
米テキサス・インスツルメンツ |
LM5113-Q1(NRND)*‡ |
100 |
内蔵 |
ローとハイ |
50 |
EPC9078 |
米テキサス・インスツルメンツ |
LMG1205*‡ |
100 |
内蔵 |
ローとハイ |
50 |
EPC9078 |
uPI |
uP1966A*‡ |
80 |
内蔵 |
ローとハイ |
— |
EPC9078 |
uPI |
uP1966B* |
80 |
内蔵 |
PWM |
— |
— |
米pSemi |
PE29101 |
100 |
内蔵 |
PWM |
— |
EPCに問い合わせ |
米pSemi |
PE29102 |
100 |
なし |
PWM |
— |
EPC9204 |
米テキサス・インスツルメンツ |
LMG1210 |
200 |
内蔵 |
PWM |
300 |
EPCに問い合わせ |
米シリコンラボラトリーズ |
Si8274GB1-IM |
630 |
なし |
PWM |
200 |
EPCに問い合わせ |
米シリコンラボラトリーズ |
Si8275GB-IM |
630 |
なし |
ローとハイ |
200 |
EPCに問い合わせ |
米アナログ・デバイセズ |
ADuM4120ARIZ |
1092 V |
なし |
ローとハイ |
150 |
— |
米アナログ・デバイセズ |
ADuM4121ARIZ |
1118 V |
なし |
ローとハイ |
150 |
— |
*フットプリント互換 ‡ピン互換 |
表2:eGaN FET対応ハーフブリッジ・ゲート・ドライバ
シングル・チップのソリューションが存在しない高電圧設計では、ローサイドのゲート・ドライバを高CMTIの大電圧信号アイソレータと組み合わせて使うことができます。
eGaN FET用コントローラ
eGaN FETは、コンバータの周波数を高められるので、コントローラは、より高い制御帯域幅と高周波コンバータ向けの厳格な安定化と共に、MHzオーダーで動作することが要求されます。多くのコントローラには、ゲート・ドライバ段も組み込まれており、このゲート・ドライバ段は、前述のゲート・ドライバへの要求を満たさなければなりません。表3と表4は、同期整流方式バック(降圧型)・コンバータ向けのeGaN FET対応コントローラを示しています。
オランダNXPセミコンダクターズ |
TEA1993TS |
内蔵 |
65 ns / 40 ns |
120 |
38 |
オランダNXPセミコンダクターズ |
TEA1995T |
内蔵(デュアル) |
80 ns / 40 ns |
100 |
38 |
オランダNXPセミコンダクターズ |
TEA1998TS |
内蔵 |
40 ns / 40 ns |
60 |
10.5 |
米オン・セミコンダクター |
NCP4305A |
内蔵 |
35 ns / 12 ns |
200 |
35 |
米オン・セミコンダクター |
NCP4308A |
内蔵 |
40 ns / 20 ns |
150 |
35 |
表3:同期整流器向けeGaN FET対応コントローラ
米アナログ・デバイセズ |
LTC7800 |
内蔵 |
320 kHz - 2.25 MHz |
98% |
60 |
米マイクロチップ・テクノロジー |
MIC2127A |
内蔵 |
270 kHz - 800 kHz |
85% |
75 |
米マイクロチップ・テクノロジー |
MIC2103/4 |
内蔵 |
200 kHz - 600 kHz |
85% |
75 |
米テキサス・インスツルメンツ |
LM5140-Q1 |
内蔵 |
440 kHz / 2.2 MHz |
95.6% / 78% |
65 |
米テキサス・インスツルメンツ |
TPS40400 |
内蔵 |
200 kHz - 2 MHz |
95% / 75% |
20 |
米テキサス・インスツルメンツ |
TPS53632G |
なし |
300 kHz - 1 MHz |
— |
5 |
ルネサス エレクトロニクス |
ISL8117A |
内蔵 |
100 kHz - 2 MHz |
— |
60 |
表4:同期整流方式バック・コンバータ向けeGaN FET対応コントローラ
デジタル・コントローラは、多相や多レベルのアーキテクチャなど、多くのeGaN FETのアプリケーションにも有用です。この用途に適した例には、マイクロチップ・テクノロジーのPICシリーズや、テキサス・インスツルメンツのDelfinoシリーズとPiccoloシリーズがあります。
eGaN FET向け受動部品
eGaN FETベースのコンバータの動作周波数が高いほど、より高い周波数向けに最適化された受動部品が必要になります。
eGaN FETコンバータの性能の重要な指標は、入力と出力のフィルタを含めた電力密度と効率です。コイル選択の重要なパラメータには、導通損失を最小化するために等価直列抵抗(ESR)が小さいこと、コアの損失が小さいこと、寄生容量が小さいことなどがあります。米ビシェイ・インターテクノロジーのIHLPシリーズは、これらの基準を十分に満たしているので適しています。
バイパス/デカップリングに適したセラミック・コンデンサは、複数のベンダーから入手でき、X7RまたはX7Sの温度係数を選べば、最高の電力密度で素晴らしい結果をもたらします。
結論
eGaN FETがアプリケーションの設計に浸透し続けると、eGaN FETの優れた性能を実現するために必要なサポート部品の周辺エコシステムも拡大します。現在、このエコシステムは、もはやGaNベースの設計の制限要因ではなく、設計者にとって、ゲート・ドライバ、コントローラ、受動部品の選択肢が急速に拡大しています。