GaNの話シリコンを粉砕するために捧げたブログ
破壊の時が来た ―― GaNがシリコン・パワーMOSFETを正面攻撃へ

破壊の時が来た ―― GaNがシリコン・パワーMOSFETを正面攻撃へ

11 12, 2019

シリコンの時代は、十分すぎるほど長過ぎます。若くてより適切な挑戦者が半導体材料の主役を引き継ぐ時です。

私が44年前にパワー・デバイスの開発を始めたとき、「お山の大将」は、シリコンのパワー・バイポーラ・トランジスタでした。1978年に、米インターナショナル・レクティファイアー(IRF)は、低速で成熟したバイポーラ・デバイスの高速な代替品として、パワーMOSFETを製品化しました。パワーMOSFETの初期の用途は、バイポーラの速度が不十分なアプリケーションでした。採用の代表的な例は、デスクトップ・コンピュータのスイッチング電源でした。最初は米アップル、次いで米IBM

GaN Makes a Frontal Attack on Silicon Power MOSFETs

1980年代半ばになってようやく、パワーMOSFETの生産規模が十分に大きくなり、パワーMOSFETのコストがバイポーラ・トランジスタと同等になりました。そして、インターナショナル・レクティファイアーはバイポーラ・トランジスタに正面攻撃しました。

そのターゲットは、バイポーラ・トランジスタ市場で最大のシェアを占めていた米モトローラ(現在は2社に分割)でした。その応酬でMOSFETを猛攻撃するために、モトローラは当初、潜在的なMOSFETユーザーを怖がらせるための策を展開しました。これらの恐ろしい戦術には、信頼性の問題、高価格、および信頼性の低いサプライチェーンの噂などがありました。

これらの攻撃にもかかわらず、パワーMOSFETは、バイポーラ・トランジスタが、それまで支配的な地位を確保していた従来のアプリケーションに受け入れられ続けました。この新しい技術の優位性を認識して、モトローラは2つの技術にとらわれないとして、独自のパワーMOSFETを製品化しました。すなわち、「私たちは両方を作るので、私たちから買ってください」として戦いの雄叫びをあげました。この問題は、彼らが最高のパワーMOSFETを作らなかったので、最終的に、2つの半導体材料間の戦争に負けたことでした。

皮肉なことに、今日のパワーMOSFETは「お山の大将」であり、GaNオン・シリコンのパワー・デバイスは挑戦者です。GaNベースのパワー・トランジスタと集積回路の初期の成功は、シリコンと比べてGaNの速度の優位性から始まりました。GaNオン・シリコン・トランジスタのスイッチは、MOSFETの約10倍、IGBTの約100倍高速です。

4G / LTE基地局のRF包絡線追跡や、自動運転車、ロボット、ドローン、セキュリティ・システム向けLidar(光による検出と距離の測定)システムなどのアプリケーションは、GaNの高速スイッチング能力を最大限に活用した最初の量産用途でした。これらの初期のアプリケーション以来、生産量は増加し、現在、GaNパワー・デバイスは、速度がより遅く、より大きく、成熟したパワーMOSFET部品と同等の価格になっています(図1参照)。

さあ、GaNの正面攻撃の時です!

図1:同等の定格のパワーMOSFETと比べて、定格100 VのeGaN FETの2019年4月の代理店価格の調査結果。赤い楕円の中がeGaN FETの価格です。

シリコンMOSFETに対するGaNの最初の直接的な競争力のある攻撃は48 VのDC-DC電源の戦いであり、2018年後半に始まりました。GaNが提供するスイッチング性能の向上と小型化という大幅な改善によって、電源設計者は、GaN FETによって、より高い電力密度とより高効率な48 V電源を構成できることに気付きました。これらの電源は、クラウド・コンピューティング、人工知能、機械学習、ゲームといったアプリケーション向けの高密度コンピューティングの用途に必要です。図2に示すLLC構成を使った900 WのDC-DCコンバータなどの単純な回路構成で、記録的な電力密度と効率を実現しました。全体の効率98%以上で約1700 W / 立方インチ(104 W / cm3)の電力密度が得られています。

図2:公称48 Vの1次側にeGaN FETのEPC2053を使い、公称12 V出力の2次側にeGaN FETのEPC2024を使ったこの900 WのDC-DCコンバータの効率は98%以上です。.

そして、自動車業界も同様の道を歩み始め、GaNパワー・デバイスにとってもう1つの非常に大きなチャンスが生まれています。

電動ステアリング、エアコン、電動サスペンション、現代の自動車やトラック内の多数のUSB-C充電ポートなど、クルマ内の電子駆動機能に対する需要が高まっていることを考えると、従来の14 Vの配電バスでは 驚くべきペースでサイズと重量が大きくなっています。 今日のマイルドハイブリッド車では、2〜8 kWの電力が必要です。14 V、8 kWの配電システムでは、570 Aを流すために複数のワイヤーが必要です。48 Vでは、その値は170 Aに低減され、重くて管理が難しいワイヤー・ハーネスの必要性が軽減されます。

48 Vシステムへの移行の価値を認識し、ティア1(1次請け)の電装メーカーは、従来の14 Vシステムとの互換性を維持しながら、この新しい電気アーキテクチャに対応する48 V〜14 Vの双方向DC-DC電源を生産しているか、または、これから生産する予定です。現在、最もシンプル、最も低コスト、最も高効率なソリューションは、図3に示すようなGaN FETベースの昇降圧コンバータです。

図3:EPCの100 VのeGaN FETを16個使う効率97%、6 kW、48 V~14 Vの双方向の車載品質DC-DC昇降圧コンバータ。

パワーMOSFETへの正面攻撃 が始まりました!

今日のGaN FETは、急速にサイズが小さくなり、性能が向上しています。さらに、現在のベンチマーク・デバイスは、理論上の性能限界から、まだ300倍もかけ離れています。EPCは10年にわたってGaNトランジスタを出荷していますが、1000億時間以上のフィールド経験があり、成熟したパワーMOSFETよりも不具合が少なくなっています。

より小さく、より速く、より信頼性が高く、同等の価格です・・・この時点で、GaN FETとICを使わない理由はほとんどありません! 現在のMOSFET生産者は、自社製品が性能限界に近づいており、実行可能な競争力のあるソリューションが注目を集めていることを認識し、信頼性の問題と信頼性の低いサプライチェーンに関する漠然とした警告(恐ろしい戦術)をすでに宣伝しています。彼らは、時代遅れのGaNの価格と性能の比較を引用しています。すでに、「私たちは、MOSFETまたはGaNを使うことができ、これにとらわれません」という保守的な立場を、確立されたシリコン・メーカーが再び表明しています。

マーク・トウェインが1世紀前に言ったように、「歴史は繰り返されないが、しばしば韻を踏む」。