GaNの話シリコンを粉砕するために捧げたブログ
eGaN FETは低EMI雑音のソリューションです!

eGaN FETは低EMI雑音のソリューションです!

5 19, 2020

GaN FETは、Si MOSFETに比べて非常に高速にスイッチングできるため、多くのシステム設計者は、スイッチング速度の高速化がEMI(電磁干渉雑音にどのように影響するかを気にします。

このブログでは、eGaN® FETを使ってスイッチング・コンバータ・システムを設計するときに考慮すべき簡単な軽減手法について説明し、スイッチング速度が高速であるにもかかわらず、GaN FETがMOSFETsよりもEMI雑音の発生が小さい理由を示します。

EMI雑音システムの概要

図1:EMI雑音システムの概要

図1は、EMI雑音システムの構成要素です。

EMI雑音システムの最初の要素はエネルギー源です。例えば、トランジスタのスイッチング事象発生源からのエネルギーには、プリント回路基板上の導体などの伝送経路が必要になります

伝送手段と経路に関係なく、EMI雑音のエネルギーを受信するにことになります。直接伝送の場合は「伝導EMI」と呼ばれ、フィールドの場合は「放射」と呼ばれます。

EMI雑音システムの最後の要素は受信器です。受信器は、定義上、破損して望ましくない動作を引き起こす回路です。受信器の回路は、発生源、またはサード・パーティの回路、例えばラジオ受信機などと同じ回路かもしれません。サード・パーティの受信回路の場合、EMI雑音によって引き起こされる望ましくない動作の防止は、EMI規格によって管理されています。

コンプライアンスと破損防止のためのEMI雑音の軽減策に取り組むことは、必然的にシステムの余分なコスト増になります。EMI雑音に対処するために対策が講じられる発生源に近いほど(そして、それを含むほど)、システムのコストは下がります。

レイアウトの影響

レイアウトは、追加コストがゼロのEMI軽減策です。コンバータを設計するとき、レイアウトには本質的に寄生インダクタンスがあります。図2に示す同期バック(降圧型)・コンバータの例では、立ち上がりエッジのハード・スイッチング遷移に続くスイッチ・ノードの電圧オーバーシュートに対するループ・インダクタンスの影響が示されています。

左の画像は、ループ・インダクタンスが約1 nHのレイアウトを示しており、リンギングによってピーク電圧が70%オーバーシュートしています。右の画像は、ループ・インダクタンスが400 pHのレイアウトで、リンギングによってピーク電圧のオーバーシュートが30%発生しています。

図2:オーバーシュートに対するレイアウトの影響

発生したEMI雑音は、電圧オーバーシュートの大きさの2乗に比例し、通常、グラウンドとコンデンサを形成する導体から発生する電界として伝播します。このループ・インダクタンスは、電流の大きさの2乗に比例する対応するEMI雑音と共に、リンギング期間中に電流も導通します。これは、通常、電力ループ回路から発生する磁界として伝搬します。

電力ループのインダクタンスを半分にすると、発生するEMI雑音が1/4に減少します。

立ち上がり/降下の影響

GaN FETは、MOSFETよりもはるかに高速にスイッチングできますが、あるデバイスが別のデバイスよりも高速にスイッチングするからといって、基本的にEMI雑音エネルギーに変化がないことに注意することが重要です。スペクトル成分のシフトのみがあります。

これを、48 Vの入力電圧を12 Vに変換し、1 MHzで動作するバック・コンバータを使った図3の例で示します。スイッチング過渡状態がそれぞれ5 nsと1 nsの2つの例です。このグラフは、立ち上がりエッジの時間を降下エッジの時間と同じに設定した両方の過渡状態のスイッチ・ノード電圧のスペクトルを示し、電圧のオーバーシュートとリンギングを除外しています。

図3:立ち上がり時間/降下時間によるスペクトル変化の影響

90 MHzでは、スペクトル成分はすでに42 dB減衰しています。過渡が5 nsの場合、最初のノッチの周波数は、200 MHzまたは1/5 nsであり、過渡が1 nsの場合、最初のノッチの周波数は1 GHzまたは1/1 nsです。

これらの周波数を超えるスペクトル振幅の減少率は、周波数10倍で40 dBです。これによって、フィルタリング要件がすでに非常に軽くなっているため、前述の電圧オーバーシュートのリンギングに対処することがより重要になります。

スイッチ・ノードは、コンデンサのプレートを実効的に形成し、グラウンドが2番目のプレートになるため、この形式のEMI雑音の電界放射が支配的になります。

逆回復(QRR)の影響

最後に、例として、ハード・スイッチングのバック・コンバータを使ったEMI雑音に対して、見過ごされがちな逆回復の影響を評価します。

逆回復は、電力ループ内のシュートスルー(貫通)電流として現れ、前述のように、電力ループ内の電流は、電圧のオーバーシュートとリンギングを引き起こします。この逆回復は、電力ループのエネルギーに追加され、したがって、逆回復電流の2乗に比例するEMI雑音源にエネルギーが追加されます。この逆回復電流の大きさは、バック・コンバータのコイル電流よりも数倍大きくなる可能性があります。

図4:逆回復(QRR)の影響

図4の左図の波形は、デッドタイムがそれぞれ5 ns、20 ns、40 nsのMOSFETベースのバック・コンバータの電圧オーバーシュートとリンギングで、同じ動作条件下での同等のeGaN FETの波形が右図です。

右の波形では、逆回復がゼロなので、デッドタイムの変化がeGaN FETに影響を与えないことが分かります。

まとめ

eGaN FETとICはEMI雑音に対して互換性があります。シンプルなレイアウト技術を採用することによって、EMI雑音の発生を大幅に低減し、EMI雑音を軽減するためのコストをゼロにすることができます。

スイッチングのスルーレートが高くても、スペクトル成分がシフトするだけで、EMI雑音のエネルギーは増加しません。より高い周波数では、EMI雑音の低減技術がより効果的であり、実装コストが安価になります。

最後に、eGaN FETとICは、内部インダクタンスが実質的にゼロのウエハー・レベルのチップスケール・パッケージ(WLCS)に封止され、加えて、逆回復がゼロなので、ハードスイッチング・コンバータで発生するEMI雑音のエネルギーが本質的に小さくなります。

eGaN FETは、スイッチング速度が非常に高速であるにもかかわらず、MOSFETよりもEMI雑音の発生が小さくなります。

 

注:コイルの選択と配置の影響に関する独ウルトエレクトロニクスの詳細な説明などの情報については、GaNの利用法シリーズのビデオ:設計の基礎:EMI雑音の低減技術をご覧ください。