GaNの話シリコンを粉砕するために捧げたブログ
GaN+デジタル制御+高性能磁気部品 超薄型、高効率(97%以上)、マルチレベルのDC-DC コンバータの設計

GaN+デジタル制御+高性能磁気部品 超薄型、高効率(97%以上)、マルチレベルのDC-DC コンバータの設計

4 07, 2021

GaNベースのソリューションをデジタル制御や高性能磁気部品と組み合わせることで、超薄型ノート・パソコンやハイエンド・ゲーム・システムなどの高密度コンピューティングのアプリケーションの効率を高め、サイズを縮小し、システム・コストを削減できます。

過去10年間にわたって、コンピュータ、ディスプレイ、スマートフォン、および、その他の民生用電子機器のシステムの薄型化と高性能化が進むにつれて、限られたスペースから、より大きな電力を抽出すると同時に、より薄型のソリューションという課題に対処することが求められています。

マルチレベル・コンバータは、磁気部品のサイズを縮小し、小型なソリューションで高効率を実現するための優れた候補です。サイズが小さく、損失が少ないなどのeGaN® FETの利点を活用することで、マルチレベル・ソリューションの性能がさらに向上します。このブログでは、eGaN FETとデジタル制御を使った48 V入力、20 V出力で、250 Wの3レベル・コンバータであるEPC9148を評価し、部品の高さがわずか4.1 mmで、システム全体のピーク効率97.8%が得られました。

なぜデジタル制御?

Full digital controlその柔軟性によって、超薄型コンバータの設計にはデジタル制御が採用されています。これは、複雑な制御構成の開発に特に効果的です。電流ループと電圧ループの補償器コントローラに基づく安定化制御は、さまざまな回路保護機能と共に、デジタルで簡単に管理できます。これらのコントローラから得られる高い時間分解能によって、GaNの最適なデッドタイム管理が可能になります。そのデッドタイムは10 ns以内であり、Si MOSFET、および、そのコントローラ/ドライバよりもはるかに短くできます。

デジタル制御によって、高速スイッチング用の高い駆動力とゲート過電圧保護用のハイサイド・ゲート電圧クランプを備えたGaN互換ゲート・ドライバの使用も可能になります。

EPC9148 は、米マイクロチップ・テクノロジーのデジタル・シグナル・コントローラ(DSC)であるdsPIC33CK32MP102を搭載しています。この100 MHzのシングル・コア・デバイスには、機能豊富な4チャネル(8出力)、分解能250 psのパルス幅変調(PWM)論理、3.5 Mspsの3個のアナログ-デジタル変換器(ADC)、ランプ信号の生成をサポートする集積化したデジタル-アナログ変換器(DAC)と伝搬遅延時間15 nsの3個のアナログ比較器、3個のオペアンプ、および高性能リアルタイム制御アプリケーション向けデータ経路と強く結合したデジタル信号処理(DSP)コアなど、スイッチング電源(SMPS)のアプリケーション向けの専用周辺モジュールを備えています。このdsPIC33CKデバイスは、フィードバック・ループが実装され、ソフトウエアで実行される完全なデジタル方式で、コンバータを駆動、制御するために使われています。

eGaN-FETベースの3レベル・コンバータの設計

同期ブートストラップ回路を備えたeGaN-FETベースの3レベル・バック(降圧型)・コンバータ EPC9148の簡略化した回路図を下に示します。この回路には、デューティ比が50% 以下の3つの動作モードがあります:1)入力電圧がQ1とQ3を介してフライング・コンデンサと負荷コイルを充電します;2)フライング・コンデンサが放電し、負荷コイルがQ2とQ4を介して充電します;3)コイル電流はQ3とQ4を介して放電します(デッドタイム中に一方の等価ボディ・ダイオードと他方のチャネルを介して、または両方のFETのチャネルを介して)。定常動作は、1→3→2→3 のサイクルをたどります。したがって、出力コイルで見られる実効周波数は、FETのスイッチング周波数の2倍なので、従来の同期整流型バック・コンバータで必要とされるよりも小さいインダクタンス値を使うことができます。このコンバータのスイッチング周波数は 400 kHzで最適化されているため、コイルで見られる実効周波数は800 kHzであり、高さ4.1 mm、2.2 µHのコイルであるWurth 7443762504022を使うために十分な高さです。したがって、低スイッチング損失を維持したまま、全体的な効率が高く、熱性能が優れています。上側FET に十分なゲート電圧(4.5 V以上)を確保するカスケード接続した同期ブートストラップ回路が採用されています。3つの制御ループは、デジタル・コントローラを使って実装され、出力電圧、出力電流、フライング・コンデンサ電圧をそれぞれ安定化します。フライング・コンデンサの電圧は、いつでも入力電圧の半分に維持して、FETの過負荷を避け、正しい回路動作を保証する必要があります。

EPC9148の回路図

3レベル・バック・コンバータ向けの高性能eGaN FET

eGaN FETs for the three-level buck converter

EPC9148の設計では、フライング・コンデンサ電圧が確立される前に、Q1が48 V入力電圧をブロックします。Q2~Q4は入力電圧の半分をブロックするだけでよいため、24 Vに対する定格電圧で済みます。Q1とQ2~Q4には、それぞれ図2に示すオン抵抗3.8 mΩで定格100 VのEPC2053とオン抵抗3.5 mΩで定格40 VのEPC2055を選択しました。いずれのeGaN FETもサイズが非常に小さく、接合部温度150℃まで動作します。

性能の評価

3レベル・バック・コンバータのEPC9148は、マルチレベル設計を検証するために構築されました。回路基板を含めた回路全体の厚さは、わずか5 mm。この回路は、25℃の周囲温度において、40℃の最大温度上昇、最大12.5 A の出力電流で強制空気なしでテストしました。コンデンサの電圧は、充電段階と放電段階でバランスが取れていました。20 V出力で 800 LFM の強制空気を使って動作する3レベル・コンバータの全体的な電力効率は、ピーク効率97.8%に達しました。負荷電流4 A以上で97%以上の効率を維持しています。12 V出力および 800 LFMの強制空気での全体的な電力効率は、ピーク効率97%が得られました。これは、すべて高さ5 mmの制限内で実現されています。

EPC9148 Outout Voltage Charts

結論

デジタル制御と高性能磁気部品を備えたGaN-FETベースのマルチレベル・バック構成は、超薄型で高効率の DC-DCコンバータの設計に使えます。eGaN FETを使って構築された 48 V入力、20 V出力、250 Wの3レベル・バック・コンバータは、ピーク効率97.8%、わずか5 mmの全体の厚さで実現できました。マルチレベル構成によって、インダクタンス値が小さい薄型コイルを使えます。eGaN FETは、実装面積が非常に小さいので、占有する領域を小さくできるだけでなく、その高速スイッチング能力によって全体的な電力効率も改善できます。

eGaN FETを使った同期整流型バック・コンバータの設計方法