GaN FETに基づくインテリジェント・パワー・アンプ・モジュール
GaNの話 – EPC Guest Blogger
5 10, 2021
GaNの話のブログのゲスト:Pavel Gurev、ロシアのSinftech Rus LLC
この記事は、もともと独Bodo’s Power Systemsに2021年4月に掲載されました。
過去数年間で、窒化ガリウム(GaN)FETは、パワー・エレクトロニクスの分野で、広く普及するようになりました。GaN FETは、その卓越した特性によって、100 W / cm3を超える非常に高い電力密度を持つスイッチング・コンバータの小型化において、ますます重要な役割を果たしています。GaNトランジスタをベースにしたコンバータの効率は、99.5%を得ることができます。変換周波数がMHz範囲に拡張されるため、磁気部品(チョーク、トランス)のサイズも大幅に小さくできます。ただし、設計者は、実用的なGaNトランジスタ設計を実装するときに多くの課題に直面します。この最高の部品のファミリーは、ウエハー・レベルのチップスケール・パッケージで提供されます。ドライバもかなり小型です。
スイッチング速度が非常に速いため、ゲート制御回路とその回路構成の最適化には重大な問題があります。念のため、GaN FETには、アプリケーションの設計に影響を与えるよく知られた寄生ボディ・ダイオードがありません。パワー部品のサイズに対する電流と電圧の値を考慮すると、プリント回路基板の構成、放熱、および、すべての動作モードでの安全動作領域の確保に関して、新しい設計アプローチが必要であることが明らかになります。いつものように、設計者は、「コスト」、「効率」、「EMC(電磁両立性)」の3つのうちの2つを選択する必要がありますが、GaN FETの場合、この組み合わせは、Si MOSFETに比べて拡張されています。
多くの機器(D級オーディオ・アンプ、交流の電流と電圧の較正器、電源変調器など)の開発プロセスを簡素化し加速するために、次のパラメータを使ってインテリジェント・パワー・アンプ・モジュール(IPAM)を作成するというアイデアが生まれました。
• 最大80 Vの供給電圧、最大20 Aの出力電流
• 正弦波出力電力500 W
• 効率98%(半分の電力)、96%(定格電力)
• 全電力帯域幅0…50 kHz
• 主搬送周波数1 MHz、最大10 MHzの内部遷移
• THDは0.01%未満(-1dB)
• 2線式シリアル・インタフェース(TWI)による診断とパラメータ設定
IPAMは、一般的な負帰還でカバーされる完全差動パルス・パワー・アンプです。通常の搬送周波数は約1 MHzで、入力レベル、出力電力、負荷インピーダンスに基づいて±50%以内で変動することがあります。エラー・アンプとして高速高精度比較器を使っています。
このモジュールには、小さなFPGAチップが搭載されています。最初の重要なFPGAの機能は、アンプの直線性を最適化するために追加のパルスを生成することです。2番目のFPGAの機能は、入力アナログまたはPWM(パルス幅変調)信号のパラメータに関係なく、パワー・スイッチと出力チョークの安全な動作モードを維持することです。FPGAは、変調指数およびその他のいくつかのパラメータを制限します。遷移周波数が制限を下回ると、FPGAは、追加のパルスを生成し、ブートストラップ・コンデンサの放電によってUVLO(低電圧ロックアウト)検出器がトリガーされることを防ぎます。最小パルスの長さも、ドライバ回路の能力に準拠するように制限されています。入力信号のパラメータが、導入された制限に対応している場合、エラー・アンプ出力からのパルス・シーケンスは、5 ns以下の遅延と最小の時間歪みで、ハーフブリッジ・ドライバに非同期で送信されます。すべてのパラメータは、2線式シリアル・インタフェースTWIを介してプログラム可能であり、ユーザーが非アクティブ化できます。
IPAMは、元の制御ループ構造のおかげで、THD+N(全高調波歪率+雑音)対周波数への依存性がなく、THD+N対出力電力への依存性が非常に低くなっています。最大200〜250 WRMSの出力電力の場合、IPAMは、一般的なシナリオで追加のヒートシンクを必要としません。
熱除去の問題は、外層に35 µmのCu、内層に70 µmの6層プリント回路基板を使うことで解決でき、ビアには銅が充填されています。このモジュールは、大きさが76✕36✕18 mmのCNC機械加工アルミニウム筐体に収納されています。最終段階では、熱伝導率が非常に高い特殊なセラミック・ベースのコンパウンドを使って真空充填が行われます。
出力チョークの開発は、TDK / エプコスと台湾Ferroxcubeによって製造された最新の高周波パワー・フェライトのパラメータを調べる必要性に関連する別の研究開発作業になりました。残念ながら、これらの企業は計算に十分な正確なデータを提供していませんでした。ギャップや巻き数の異なるサンプルを作成し、詳細に調べる方法を見つけなければなりませんでした。これに対応するために1カ月以上かかりました。
その結果、20 Aの線形電流範囲とSRF>10 MHzの33 µHの小型チョークを作成しました。残念ながら、世界の業界は、同様の特性を持つチョークを製造していません。さまざまなパラメータで約16個の使用可能なチョークを作りました。
出力復調LCフィルタ用のさまざまなフィルム・コンデンサの実際の特性を調べ、ポリフェニル・サルファイド誘電体を備えた製品を選択する必要もありました。セラミック・コンデンサは、非線形性が非常に大きいため、これらの目的には適していません。パワー段に最適なセラミック・ブロッキング・コンデンサを選択するために特別に注意しました。ベクトル・ネットワーク・アナライザ、アクティブ・プローブを備えた2 GHzのオシロスコープ、および最初のいくつかの燃焼実験なしで、この作業を実行できるかどうかは分かりません。多くのリファレンス・デザインは、「それ自体」であり、実験机では「現状のまま」でしか機能しませんが、特にEMI(電磁干渉)雑音の問題を引き起こす外部接続によって拘束されている場合は、実際の環境では機能しません。スイッチング電流のほとんどすべての高周波成分がモジュール内を循環することをなんとか実現できました。
将来、高効率を実現し、EMIの問題を生じさせたくないなら、ゲート・ドライバ回路を慎重に設計してください。自然に燃え始める前に、寄生インダクタンスを追加する回路をシミュレーションすることを強く勧めます。GaN FETの場合、信頼性の高いゲート制御と実際のパラメータ(効率、EMI)の間には、非常に弱いトレードオフがあります。ゲートを確実に制御する方法を見つけることができます。重要な場合に、フェライト・ビーズのいくつかの素晴らしい特性を使えることがあることを提案します。dV / dtとdI / dtが非常に大きいとき、動作中にモジュールの電源グラウンドと信号グラウンドの間に大きな電圧スパイクが発生します。TWI(2線式シリアル・インタフェース)およびERROR / ENABLEの制御信号にガルバニック絶縁を追加しました。
RGBのLEDは、複数の故障の事実と原因を示します。エラーの種類は、長い一時停止で区切られた一連のフラッシュにエンコードされます。IPAMは、保護区間を生成する組み込みのタイマーを使って、自動的に再初期化できます。
出力復調フィルタのない汎用2相モジュールを開発中です。さまざまな回路構成(降圧、昇圧、LLC)のさまざまなDC / DCコンバータに使えます。同様のパラメータを備えたパワー・モジュールの3相版を構築できます。
タイムリーなサポートをしてくださったEPC欧州事務所に感謝の意を表します。この2年間の大きな作業の結果、GaNパワー・エレクトロニクスの機能を深く理解することができました。いくつかのアーキテクチャ、回路、回路構成、および設計ソリューションが開発され、画期的な電子システム向けのさまざまなデバイスの開発が可能になりました。
参考文献:
- /epc/epc/GalliumNitride/whygan.aspx
- https://patents.google.com/patent/US20110068864A1/en
- https://www.ti.com/lit/wp/slyy085/slyy085.pdf
- /epc/epc/Portals/0/epc/documents/papers/eGaN FET Electrical Characteristics.pdf
Pavel Gurev氏は、ロシアのSinftechのCTO(最高技術責任者)であり、システム・アーキテクチャの設計、アナログ、デジタルのハードウエアの設計、および開発、生産サポートを担当しています。