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eGaN FETを使って温度上昇が小さい12 V入力、60 V出力のブースト・コンバータを設計する方法

eGaN FETを使って温度上昇が小さい12 V入力、60 V出力のブースト・コンバータを設計する方法

10 25, 2021

ノート・パソコンやパソコンのモニターなどの最新のディスプレイには通常、低電力ブースト(昇圧型)・コンバータが必要です。このアプリケーションでは、画面の明るさの強度が低から中程度であり、このコンバータは、ほとんどの場合、軽負荷で動作するため、軽負荷の効率が非常に重要です。eGaN FETの低いスイッチング損失は、この課題に対処することに貢献します。このGaNの話のブログは、シンプルで低コストの同期ブースト構成で、eGaN FETを使って温度上昇が小さい12 V入力、60 V、50 W出力の DC-DCパワー・モジュールの設計について検討します。

小型、高効率のeGaN® FETベースの同期ブースト・コンバータの設計

同期ブースト構成は、そのシンプルさ、制御の容易さ、低コストのために、DC-DC降圧型コンバータの設計で一般的です。eGaN FETベースの同期ブースト・コンバータの回路図を図1に示します。12 V入力、60 V、50 W出力のパワー段には、オン抵抗RDS(on)が6 mΩで定格100 VのeGaN FET(EPC2052)を選択しました。高い駆動能力が特徴のゲート・ドライバuP1966Eを使ってFETを駆動します。4.9 Vのゲート電圧を保証するEPC2038を備えた同期ブートストラップ回路をハイサイドのゲート駆動に使います。制御方式の開発において、10 ns未満のデッドタイムと柔軟性を可能にするデジタル制御を採用しました。効率を最適化するために、搭載した2つの小さなスイッチング電源回路を使って、ゲート・ドライバとデジタル・コントローラのハウスキーピング電圧5 Vと3.1 Vをそれぞれ生成します。ハウスキーピング電源は、双方向動作を可能にする単純なダイオード「OR」回路を使って、高電圧ポートまたは低電圧ポートから電力を供給することもできます。

図1. eGaN FETベースの同期ブースト・コンバータの概略図。この設計は双方向に対応します。

このコンバータのスイッチング周波数は、軽負荷時の効率を高めるために500 kHzで設計されており、コイルは10 µHのTDKのフェライト・コイルです。軽負荷時では、コイルのコアと交流銅損が支配的な要因です。したがって、インダクタンスが大きいほど、リップルが減少し、コア損失と交流銅損が減少するため、軽負荷時の効率が向上します。

設計検証

同期ブースト・コンバータのEPC9162を図2に示します。0.15 Aの出力電流でのスイッチ・ノード電圧vSWの波形が図3です。スイッチング波形が高速できれいであることが分かります。

さまざまな入力電圧で動作する同期ブースト・コンバータの全体的な電力効率と電力損失が図4です。ピーク効率は、12 V入力、60 V、0.85 A出力で95.3%です。

図2. 12 V入力から、60 V、50 W出力への同期ブースト・コンバータEPC9162の写真。
図3. 出力電流0.15 Aでのスイッチ・ノード電圧vSWの波形。
図4. 20 V出力でのハウスキーピング消費電力を含むシステム全体の効率。

強制空冷なしで12 V入力、60 V出力、出力電流0.85 Aで動作するコンバータの熱画像が図5です。わずか40°Cの温度上昇が実現できています。GaN FETは、緩和された温度上昇または強制空冷によって、より多くの電流を流すことができることは明らかです。

図5. 12 V入力、60 V、0.85 Aの出力で動作する同期ブースト・コンバータの熱画像。強制空冷なしで熱定常状態。

結論

12 V入力、60 V、50 W出力のeGaN FETベースの同期ブースト・コンバータは、チップ面積が2.25 mm2と小さく、ピーク効率95.3%で、わずか40°Cの温度上昇を実現しました。ノート・パソコンやモニターのLED(発光ダイオード)バックライトなど、軽負荷時の効率が重要なアプリケーションでは、eGaN FETの高速スイッチングによって、スイッチング損失が大幅に削減され、効率が向上します。加えて、温度上昇が小さいことによって、機器の過熱が防止され、同期ブースト構成がシンプルで低コストのソリューションを提供します。