重要なポイント

  • シリコンでは、ムーアの法則はガソリンを使い果たしました。
  • 窒化ガリウムは、ようやく学習曲線を登り始めたところであり、爆発的な革新の時代を推進しています。
  • ムーアの法則に忠実に、Efficient Power Conversion(EPC)の新しい第4世代eGaN® FETファミリーは、現在の世代を2倍上回っています。
  • 第4世代のeGaN® FETは、サーバーや通信機器に使われるDC-DCコンバータの値を2倍にすることができます。
  • この新しい最先端技術は、eGaN 技術を120億米ドルのトランジスタ市場、300億ドルのパワー・マネージメント(電源管理)市場、400億ドルのアナログIC市場、そして、おそらく3000億ドルの半導体産業を支配するという目標に近づけます。

ムーアの法則の復活

シリコンは、ガソリンを使い果たしています

前回のFast Just Got Fasterのブログで、半導体メーカーの投資リターンは、世紀が変わってから、S&P500を下回っているという事実について議論しました。この不振の大きな理由の1つは、シリコン・ベースの製品のそれぞれの新しい世代のために必要な投資の増加があります。これは、かつてないほどに小型化したトランジスタと関連コストの削減を消費者に渡すことができると説明したムーアの法則の逆です。

図1は、この現象を時間の関数として、1米ドルで購入することができるトランジスタの数をグラフで示しています。トランジスタ1個当たりのコストは、結果として得られるコスト削減を上回り、それぞれの新しい世代のために必要な投資によって上昇し始め、2012年に初めて曲線が下向きになりました。この意味合いは、過去60年の間、3000億ドルの半導体産業の活力に燃料を供給する毎年毎年の一貫したコストの低下があったと同じ程度に、遠くまで及びます。

The cost of silicon has started to increase

図1:最先端のデジタル回路におけるトランジスタのコストが初めて上昇し始めています。

eGaN 技術がムーアの法則を復活

Generation 4 Transistors lose less power

図2:第4世代のトランジスタのオン抵抗は、その前身の第2世代の半分です。トランジスタのオン抵抗が低いほど、電力損失は小さくなります。

パワー・エレクトロニクスの世界で最も売れている製品は、シリコンのパワーMOSFETです。Fast Just Got Fasterのブログの3番目で、成熟してはいますが、まだ主流のパワーMOSFETから、窒化ガリウム(GaN)で作られたトランジスタへの置き換えを予測する考え方について説明しました。この次のブログでは、GaNの優れた性能が2010年に広く利用可能になるまで存在しなかった驚くべき新しいアプリケーションを議論しました。ワイヤレス・パワー伝送、RF包絡線追跡RF包絡線追跡自動走行自動車用LiDAR(光による検出と距離の測定)、および、新しい医療機器は、すべてGaNの高速性と小型であることに依存しています。加えて、これらの新市場は、既存市場とほぼ等しい大きさ. です。eGaN技術によって可能になった革新は、ほぼ毎週のように新たな市場機会を創造しています

EPCは、2014年6月にeGaN FETの新世代品を製品化しています。この第4世代のトランジスタは、ムーアの法則に忠実に、前世代(第2世代)に比べて、コストを削減し続けると同時に、性能を2倍に高める多くの技術的なブレークスルーを組み込んでいます。この2倍の性能は、パワー・トランジスタの基本的な2つの特性で具体化されます――オン抵抗とスイッチング速度です。トランジスタが動作しているとき、オン抵抗が低いほど、トランジスタ内部の電力損失は小さくなります。スイッチング速度が高速なほど、システムを小型化することができます。図2は、30 Vから100Vの範囲のデバイス定格における第2世代の製品と第4世代の製品のオン抵抗の比較です。

Gen 4 eGaN FET's improve over Gen 2 by a factor of two

図3:トランジスタのスイッチング速度の最良の指標は、ハード・スイッチング性能指数(FOMHS:hard-switched figure of merit)です。この値が小さいと、一般的に、DC-DCコンバータにおける特性が向上します。この図は、第2世代と第4世代のeGaN FETの比較を示し、2倍程度改善していることが分かります。

eGaN FETのこれら2世代のデバイスのスイッチング速度を比較するために、DC-DCコンバータの設計者が使用する特別なハード・スイッチング性能指数 (FOMHS) を見る必要があります。この性能指数に対して、各スイッチング・サイクルの間、より小さい値がより低い電力損失につながり 、したがって、回路において、より高い周波数の動作を可能にします。図3に示すように、新世代の製品は、前世代の約2倍高性能です。

これら2つの特性、つまり、オン抵抗とスイッチング特性は、より効率的な電力変換につながります。これを示すために、私たちは、広く測定基準が理解されており、大規模な市場を形成しているDC-DCコンバータを尺度として使います。

図4は、DC-DCコンバータの最も一般的な2種類、つまり、12 V入力から1.2 V出力、48 V入力から12 V出力の構成におけるシリコンMOSFET、および第2世代と第4世代のeGaN FETとの間の特性の比較です。数1000万のこれらのコンバータがサーバーや通信機器で毎年使われ、サーバー・ファーム内の最大のエネルギー浪費源の1つになっています。

これらの各グラフの縦軸は、電流(横軸)の関数としての効率を示します。どちらの場合も、eGaN FETベースのコンバータは、MOSFETベースのコンバータを大きく上回り、12 V 入力、1.2 V出力のコンバータでは30%改善し、48 V入力、12 V出力のコンバータでは44%改善していることが分かります。第4世代eGaN FETは、第2世代のデバイスと同じように、シリコン・ベースのMOSFETと比較して性能の差を約2倍に広げます。eGaN FETによる性能の向上は、シリコン・ベースのMOSFETに比べて、DC-DCコンバータの値を2倍以上にすることができます ―― これがムーアの法則に対する半導体のこだわりを復活させます。

Output Current (A)
(a)
Output Current (A)
(b)

図4: 12 V入力、1.2 V出力のDC-DCコンバータ(a)、および48 V入力、12 V出力のDC-DCコンバータ(b)におけるMOSFETと、第2世代デバイス、第4世代デバイスの間の効率の比較。

エンド・ユーザーの性能も2倍に

性能を2倍にすることの本当の意味は、単にDC-DCコンバータの値を2倍にするよりも、はるかに重大です。これらのeGaNトランジスタが発明され、性能の量的変化を達成するまで、知られてはいましたが眠っていた新しいアプリケーションがありました。これを、第2世代のデバイスがここ数年で可能にしました。ムーアの法則に忠実に、第4世代eGaNトランジスタの性能が2倍になることは、同様の技術革新に拍車をかけ、技術の学習曲線を上に動かし、小型化、軽量化、低コスト化が必要な製品に対して、新しいアプリケーションへの道を開きます。

私たちのGaNへの理解が絶え間なく進展するにつれて、この技術は、EPCの当初のタイムテーブルを十分越えて前に突き進んでいます。当初は2016年を目標としていたeGaNの集積回路は、実際には2014年9月に製品化しました。第5世代eGaN FETは、2016年初めの予定で、2017年には第6世代になるでしょう ―― この速さはムーアの法則を超えています! eGaN FET技術は、120億ドルのディスクリート・トランジスタ市場の枠をはるかに超えて、300億ドルのパワー・マネージメント市場へ、400億ドルのアナログIC市場へ、そして、おそらく、3000億ドルの半導体市場全体へと拡大することが予想されます。

これは、まだ始まったばかりです・・・