重要なポイント

  • GaN技術はその初期にあり、2年ごとに特性が2倍向上するという「ムーアの法則」の道筋を辿るでしょう。
  • パワー・デバイスのワン・チップへの集積は、GaNでは簡単であり、費用対効果を著しく改善します。
  • 今日の120億米ドルのパワー・トランジスタ市場を超えて、パワー・マネジメント(電源管理)市場は312億ドルです。GaN技術は、単一の半導体チップ上にアナログとパワーの機能を集積することによって、優れた費用対効果で、これらのアプリケーションを攻め落とす準備が整っています。
  • 半導体産業全体の3000億ドルの市場は、今、シリコンが主流ですが、GaN技術は、その「中心部を打ち抜くこと」を狙っています。

GaN技術の拡大する市場

Fast Just Got Fasterの過去5本のブログで、私たちは、窒化ガリウム結晶の基本特性から、この結果としての電気的特性へ、そして、この材料はどういうものかへの経路を辿りました。これがeGaN® FETとして形成されたとき、 ワイヤレス・パワー伝送LiDAR(光による検出と距離の測定)包絡線追跡のようないくつかの驚くべき新しい最終アプリケーションを可能にすることができます。さらに、eGaN FETは、AC-DCや DC-DC の電力変換などのほとんどの既存のアプリケーションで、実質的に特性を向上した上で、成熟したシリコン・ベースのパワーMOSFETを置き換えることができます。成熟した既得権者によって支配された 120億米ドルの市場 は、今、獲得可能な賞金です。

GaN技術の拡大する市場

GaN技術の旅は、まだ始まったばかりです。そして、その理論的な性能限界からは、まだ遠い。マイクロプロセッサ技術の成長を予言したムーアの法則を思い起こせば、少なくとも今後10年間で、2〜4年ごとに製品性能が2倍向上すると見積もることは、まったく合理的です(図1参照)。

Moore's Law for eGaN FETs

図1:EPCは、eGaN FETの特性が2年ごとに2倍になるだろうと予測しています。この結果、形状が小型化するという性能の向上に帰着します。

単に費用対効果の改善だけでなく、電力変換市場に影響するGaN技術の最も大きな潜在能力は、同じ基板上に、電力レベルのデバイスと信号レベルのデバイスの両方を集積できるというデバイス固有の能力から来ています。GaN技術は、一般的なシリコンIC技術に対立するものとして、設計者は、より簡単でコスト効率の高い方法で、ワン・チップ上にモノリシックの電源システムを実現することができます。

Today's eGaN FETs

図2:今日のeGaN FET(8個の青色のデバイス)は、シリコン・ベースのドライバとコントロールICを備えたプリント回路基板上に実装されたディスクリート・トランジスタとして使われています。

今日、eGaN FET製品は、1個のディスクリート・トランジスタとして作られています。これらのデバイスは、駆動と制御のための集積回路と一緒に使われます。すべての種類のトランジスタに、それらに付随する集積回路を加えたものが、パワー・マネジメント(電源管理)市場の大多数を占めます。米調査会社HISアイサプライ(IHS iSuppli Research)社によれば、2011年には、この市場全体で312億米ドルでした。

GaNは、この312億ドルの市場全体を置き換えるための良い候補ですか。私たちの答えは、「はい」であり、それが、今後数年にわたって段階的に起こるだろう、と信じています。

図2は、一般的なパワー・システム設計者が今日、eGaN FETを備えた回路を実装する方法を示します。8個の青色の長方形は、コンピュータ・サーバーや通信機器で一般的に使われるタイプのDC-DCコンバータを形成するプリント回路基板上に搭載された個々のeGaN FETです。

Tomorrow's eGaN FETs

図3:ワン・チップに集積された4個のeGaN FET。

図3は、EPCが開発中の製品の写真です。4個のデバイスがワン・チップに集積されています。この集積化によって、プリント回路基板のスペースを削減できるだけでなく、製造コストも削減でき、システムの性能を向上します(2015年のこれらの製品にご期待ください)。この種の革新、すなわち、ワン・チップに機能を集積化する可能性は、MOSFETと比べて、eGaN FETの相対的な競争力を一層、高めます。しかし、個別素子の集積化は、必ずしもディスクリート・トランジスタによって占められた120億ドルを超える市場規模を拡大させませんが、eGaN FETは、より有益な方法でその市場に攻め込むことができます。

Today's eGaN FETs

図4:eGaN技術の発展は、プリント回路基板に実装された120億ドルのディスクリート・トランジスタから、パワー・デバイスの集積化へ、そして最終的には、パワーにアナログを加えた機能のパワー・マネジメント市場を統合した312億ドルへと発展します。

312億ドルのパワー・マネジメント市場、これより大きなものを得るために、取るべき次のステップは、今日、シリコンの独占領域であるアナログIC機能を集積化することです。図4で説明されたそのステップも開発中で、2017年ころには顧客に渡す準備が出来ているでしょう。パワーとアナログの機能の集積化は、コストとスペースの更なる削減につながり、もっと重要なのは、GaNの優れた特性が、eGaN FETを駆動するアナログ回路にもたらされることです。比較的遅いシリコンのアナログ・ドライバICを、集積化されたGaN回路に置き換えることは、製品性能の大幅な向上を可能にします。しかも、大幅に削減したコストで!

パワー・マネジメント半導体の312億ドル市場は、全体で400億ドルのアナログIC市場、潜在的には、合計3000億ドルの半導体市場に向かう道の出発点にすぎません!

シリコンは、道の行き止まりに着きましたか。まだです。しかし、シリコンがほぼ60年間支配した後、シリコン支配への大きな挑戦が最後に表面化してきました。

 

次の話題

Fast Just Got Faster の次のブログは、シリコン・ベースの半導体サプライ・チェーンにすでに投資された何10億ドルが、優れた配当をもたらすeGaN技術によって、どのように強化されるか、を調べます。