重要なポイント
- GaN技術が低コストのシリコン集積回路のすでに整備されたインフラと互換性があることによって、GaN技術は、十分に利用されなかった半導体サプライ・チェーンを何10億米ドルに増加させることができます。
- eGaN FETは、半導体サプライ・チェーンの1つの標準的な要素が不要です。すなわち、外側のプラスチック・パッケージです。平均的に、プラスチック・パッケージは、シリコンMOSFETのコスト全体の約50%を占めます。
- サプライ・チェーンの多くが整っていて、十分に利用されていないので、eGaN FETの生産は、新たな資本への非常に限られた投資で迅速に拡大することができます。
- 十分に利用されなかった既存の半導体サプライ・チェーンを部分的に強化することによって、私たちは、今後3年で、GaNトランジスタの生産コストがシリコン・パワーMOSFETのコストよりも下がると期待しています。
eGaN® FETのサプライ・チェーン
Fast Just Got Fasterのこれまでのブログで、窒化ガリウム結晶の基本的な性質から、この材料はどのようなものかへの経路を示してきました。そして、eGaN® FETに形を変えたとき、 ワイヤレス・パワー伝送、 LiDAR(光による検出と距離の測定)、 包絡線追跡のようないくつかの驚くべき新しい最終アプリケーションを実現可能にすることができます。パワー・
さて、eGaN技術の成長を支援するために必要なサプライ・チェーンに目を向けましょう。シリコン技術のサプライ・チェーンを信じられないほど効率的にするために、何1000億ドルもが費やされてきました。GaNトランジスタは、シリコン・ベースの生産のこの莫大な基盤に対して、どのように競争することができるのか。
シリコンMOSFETのサプライ・チェーン
図1:標準的なパワーMOSFETのサプライ・チェーン。各ブロックは、しばしば異なる大陸の、異なる設備で実施されます。
図2:ウエハー加工のクリーン・ルームの内部写真。
図3:パッケージングのクリーン・ルームの内部写真。パワーMOSFETを製造するコストの約50%は、パッケージング工程です。
現在のパワーMOSFETは、図1に示されるようなサプライ・チェーン・モデルをたどります。出発点は、シリコン結晶の成長で、エピタキシャル・シリコンの薄い層の成長がこれに続きます。その後、これらのウエハーは、何100個(あるいは何1000個)もの個々のトランジスタを形成した完成したウエハーを生産するために、何10、場合によっては何100もの処理が施されます。図2は、半導体製造に共通のクリーン・ルームと設備を示すウエハー加工施設の内部写真です。これのようなウエハーの加工やテストの新しい設備を構築し設置するために、それぞれ数10億ドルかかります。
次の工程は、テストです。ここでは、不良のデバイスが識別され、その後のステップで除去されます。テストに続いて、完成したウエハーは、個々のデバイスに切断され(1個1個にされ)、異なる設備へ送られます。いったん、1個1個に切断されたら、良いデバイスは、プラスチック・パッケージの中に組み込まれ、不合格品を識別するために再びテストして排除し、梱包されて顧客に出荷されます。図3は、クリーン・ルームとアセンブリ装置を示し、アセンブリ設備の内部写真です。平均では、プラスチック・パッケージの中にMOSFETを封止する工程は、製品の全コストの約50%を占めます。
eGaN FETのサプライ・チェーン
現在のeGaN FETのサプライ・チェーンが図4です。パワーMOSFETと同様に、出発点は、シリコン結晶の成長です。エピタキシャル・シリコン層の代わりに、窒化アルミニウム、窒化アルミニウム・ガリウム、窒化ガリウムのエピタキシャル構造が成長されます(これは、ヘテロ・エピタキシャル構造と呼ばれています)。この成長は、GaNトランジスタ用に専用化した設備が必要な唯一の工程です。エピタキシャル成長とウエハー加工の両方とも現在では、元々、DRAM製造のために1980年代の後期に建設された商用シリコン・ファウンドリの内部で実施されます。この種の後縁の処理能力は、この業界において広く利用可能で、この技術は、より小さな幾何学的形状によって牽引されるようなものではないので、最先端eGaN FETの生産にまったく適当です。先進的なパワーMOSFETと比べて、eGaN FETは、ウエハー加工工程において、はるかに少ない工程数で済みます。
図4:現在のeGaN FETのサプライ・チェーン。各ブロックは、それぞれ異なる設備で実施されます。最後の3工程はすべて、台湾の同じ都市にあります。
図5:完成したeGaN FETウエハー。このウエハーの上に、約1万個のトランジスタがあります。次は、1個、1個にする工程です。ウエハーは切断され、テストに合格した個々のトランジスタは、故障のあるデバイスから分離されます。
図6:将来のeGaN FETのサプライ・チェーン。シリコン結晶成長に続くすべての工程が同じ施設で実施されると期待されています。
MOSFETでのように、テスト工程によって、故障のあるチップは、将来の分離のために識別され、ウエハー加工へと続きます。MOSFETと異なり、eGaN FETは、まだウエハーの形態の間に、保護用プラスチックの被覆を施され、外部の世界への電気的接続を形成するために、はんだ付け可能なバンプのスクリーンが印刷されます。eGaN FETを生産するための工程のこの比較的低コストのシーケンスは、シリコンMOSFETに必要な高価で大きなプラスチック・パッケージの置き換えとなります。
この時点では、eGaN FETのウエハーは、図5に示されるもののように見えます。このウエハー上に約1万個のトランジスタがあります。同等のシリコンMOSFETのウエハーでは、わずか2000〜3000個のデバイスしかないでしょう。1個ずつに切断して、梱包し、出荷することが最後の工程になります。
今後2、3年で、バンプ、1個ずつに切断すること、テスト、梱包、出荷の工程は、図6に説明されるようなウエハー加工施設に統合されるでしょう。この統合は、コストを削減し、サプライ・チェーンのサイクル・タイムを短くするでしょう。さらに、それは、市場価格の変動への柔軟性や敏感さを改善し、拡張するために必要な運転資金を削減します。
資本投資と製品コスト
シリコンの表面にエピタキシャルGaN層を成長するために必要な装置を例外として、eGaN FETを製造するために必要な装置はすべて、現在、何10億個ものシリコン集積回路を製造するために使われた標準の後縁設備です。歴史は、シリコン・ウエハーの後縁の処理能力が慢性的に豊富なことを示しています。常に利用可能で非常に成熟した処理能力の利用は、大量のeGaN FETを生産するために必要な資金とリスクを大幅に削減します。
図7:eGaN FETとパワーMOSFETのコスト比較。私たちは、2016年には、同じような定格のパワーMOSFETよりも、eGaN FETの生産コストの方が小さくなると期待しています。
全体をまとめると、どうなるでしょうか。同じような耐圧とオン抵抗の仕様のパワーMOSFETとeGaN FETのコスト比較(Fast Just Got Fasterのブログ2で議論されたように)を図7に示します。規模の利点でも次世代エピ成長装置の導入でも、eGaN FETは、時代遅れのパワーMOSFETに比べて、生産することが高価であってはなりません。この2つの組み合わせによって、迅速にサプライ・チェーンを拡張するために必要な比較的低いコストとリスクで生産コストを削減できます。そうすれば、eGaN FETが主要な電力転換トランジスタとして、パワーMOSFETを押しのけるだろうという主張は、完全に説得力を持ちます。