重要なポイント
- シリコンは、電力変換において、特性の理論的な限界に達しました。
- 窒化ガリウム(GaN)と炭化ケイ素(SiC)は、シリコン・パワーMOSFETの120億米ドル市場の多くを置き換えるでしょう。
- シリコンの理論的な限界よりも5~10倍良い特性の製品が今、生産されています。
電力変換:
シリコンの道は行き止まりです
電気は、私たちがするものすべての日常生活の中に存在します。携帯電話から冷蔵庫、そして私たちが運転する自動車まで、電気は、所望の結果を達成するために意図された機能を行なうように要求されます。新興国において、中流階級の人々の生活水準が向上し続けるとともに、電気への需要が著しく増大すると予想されています。実際、電気の世界需要が今後25年にわたって約75%増大するとみられています。
電力変換プロセス
多くの電気機器が壁のコンセントで始まり、交流電源がその最終用途への経路に沿って変換され安定化される必要があります。この変換の流れは、交流から直流へ、そして直流から直流(数回)に変換することを含んでいるかもしれません。各機器や、各機器の中の各機能では、効率的な性能を得るために、電気を正確に再フォーマットされる必要があります。この電気の正確な再フォーマットが、「電力変換プロセス」が意味するものです。
電力変換システムの心臓部に、特別の仕事を遂行するために、正確な仕様で設計されたパワー半導体トランジスタがあります。この正確な仕様のトランジスタは、特定のアプリケーションに合わせて、より効率的に電気を変換します。
パワーMOSFETの発明
パワー・トランジスタは、35年以上前のパワーMOSFETの製品化で、産業を変える革命をもたらしました。シリコンに基づいたこれらのパワー・トランジスタによって、高効率電力変換の商用化が現実的になりました。
パワーMOSFETは、電子の流れを切ることによって、最小の損失で、小さなエネルギーのパケットの中に、正確に電気を管理します。次いで、エネルギーのこれらのパケットは、ユーザーによって要求された正確な電力を供給するために必要とされる正確なフォーマットに再構築されます。シリコン・ベースのMOSFETが広く利用されていますが、今、この技術は、その性能限界に近づいています。シリコンは、十分に速くスイッチングすることができないだけでなく、現在要求されているアプリケーションに必要な電力効率も提供できません。
パワーMOSFETの陳腐化
パワーMOSFETでは、オン抵抗「R」で規定される導通と、デバイスをオン状態からオフ状態(またはオフからオン)にするために必要な、一般的には「Q」として示される電荷の量との間に、基本的なトレードオフがあります。このトレードオフは、デバイスのオン抵抗と電荷を掛け算したRQ積と呼ばれる性能指数(figure of merit)を決めます。既存のアプリケーションへの革新的な改良、および、新たに出現するアプリケーションには、パワーMOSFETの能力を大きく超えるRQ積が必要です。
Fast Just Got Faster
パワー半導体トランジスタの選択肢として、シリコン・パワーMOSFETの置き換えを狙ういくつかの技術が出現しています。現在、最も有望な技術は、GaN(窒化ガリウム)とSiC(炭化ケイ素)です。GaN技術とSiC技術の両方とも、より高い電力密度、より高い電圧、より低い漏れ電流という利点があり、より高温で動作する能力があるワイド・バンド・ギャップの材料です。
これらのワイド・バンド・ギャップ技術は、理論上、シリコンと比較して、トランジスタのサイズを小型化でき、 100倍0 倍以上のRQ積を実現できます。現在、すでにシリコンよりも 5~10倍良い特性 の商用のGaN製品が市場に出回っています。その改善は、ムーアの法則を連想させるペースで起こっています。
GaN技術もSiC技術も両方とも、パワー・トランジスタ用基礎材料として、シリコンを置き換えるでしょう。それらは、 120億米ドルの電力変換市場において、シリコン・パワーMOSFET、および、それに近いデバイスのIGBTを置き換えることによって、ここ数年の間に、それぞれの地位を確立するでしょう。