ワイヤレス・パワー伝送:業界標準規格への
リーダーシップ・ポジションに向けた騎乗が始まりました!

ワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)は、最近、「エンド・ツー・エンド」のWiPo(ワイヤレス・パワー伝送)システムの効率試験に着手するために、米コロラド州立大学(CSU)に調査を委託し、A4WP(Alliance for Wireless Power)を標的とした最初の一斉射撃と思われる報告書をWPCが提出しました。Qi(チー)規格に基づく(有利な)試験基準によって、CSUのグループは、Qiが勝者であることが分かったとしています ―― 待った、報告書に丹念に見てみましょう。試験方法に不備があり、WPCの報告書はまったく私利的だったことは明らかです。ただし、効率試験は重要な問題なので、詳しく見てみましょう。

ワイヤレス・パワー・システムの効率が、どのように測定され報告されたのでしょうか・・・問題あり!

効率:省エネ意識の高い消費者の戦いの叫び

便利な生活への探求と省エネへの探求は、エレクトロニクスの時代に生きる「光と影」のジレンマを提起します。これは、まさにワイヤレス・パワー伝送技術の置かれた状況です。急に出現したこの技術は、「電源コードを切断」し、壁のACアダプタを不要にし、おそらく最終的には壁のコンセントも不要にすることが期待できます。

さて、ここで質問です:ワイヤレス・パワーは、壁のコンセントに差し込んだ従来のACアダプタよりも効率が低いでしょうか、そして、二酸化炭素の排出量を増やすでしょうか? 無線システムの中には、他のものよりも効率が高いものがありますか? これは、エネルギー効率の基準によって規制される省エネを意識した世界で検討されなければならない2つの基本的な質問です。

現時点で、モバイル機器のワイヤレス・パワー伝送(WiPo)向けの3つの異なる規格があります:ワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)の低電力で密結合のQi規格、もう1つの低電力で密結合のパワー・マターズ・アライアンス(PMA)規格、A4WP(Alliance for Wireless Power)の電力範囲が広くて疎結合の高共鳴Rezence規格の3つです。Qi規格とPMA規格のシステムでは、送信コイルのセットの間で明確に定義された固定の位置決めが必要であり、1つの給電機器と1つの受電機器に制限されます。これに対して、A4WPのシステムは疎結合なので、機器は、給電機器の表面上のどこにでも配置することができ、複数のデバイスでも対応できます。主に2種類に分けられる規格の間のこの基本的な違いは、それぞれの効率を測定して報告することができる方法にトレードオフが生じます。

主な違いは、Qi / PMA規格に合わせて設計されたシステムは、一度に1つの機器しか充電することができず、給電コイルは、受電機器(例えば、携帯電話)に近接(密結合)していなければならないことです。一方、Rezence規格は、消費者に、より多くの利便性を提供します。例えば、A4WP規格の下で設計されたシステムは、たとえ受電コイルの構成や電力定格が異なっていても、さらに、給電機器が、現在のQi / PMA規格が許容する距離よりも離れていても(疎結合)、同時に複数の受電機器を充電することができます。

さまざまワイヤレス・パワー規格の間に大きな差があり、さらに、従来のACアダプタも含めれば、それらの間の変換効率を調べて比較することは難しくなります。最終的には、すべてのACアダプタが準拠しなければならないエネルギースターなど、さまざまエネルギー効率の基準を遵守することも、これらのシステムの変換効率を正確に調べるためには重要です。

効率測定への挑戦を評価します

Qi規格とA4WP規格は今、「選択された規格」になるために、自身の地位を強化する努力をしており、お互いに批判を浴びせるところまで加熱してきました。最近、Qi規格のWPCは、そのようなA4WP規格への攻撃として、WPCのウエブサイトにブログを掲載しました。このブログで、彼らが委託したコロラド州立大学(CSU)が実施した効率試験の結果を報告しています。

この試験の動機:さまざなワイヤレス・パワー・システムの効率を比較することができる手段を見つけること ―― これは立派です。残念ながら、異なる規格の下で設計されたシステムを簡単に比較することができるという基本的な前提の設定だけでなく、採用された試験方法にも深刻な欠陥がありました。無線システムの規格がエンド・ツー・エンドで最高の効率が得られるシステムを作るという要求を解決する、と仮定すると、コロラド州立大のグループは、テスト条件を導くためにQi規格の設計パラメータを使って、結果を評価していました。さらに、この試験は、評価されたシステムを正確に説明することにも失敗しました。Qi規格に基づくシステムは、既製のユニットが使われたとみられますが、A4WPに基づくシステムは、EPCのデモ・システムを使いました。このEPCのデモ・システムはA4WPの部品を使っていますが、規格に準拠しているとは言えません。

この大学のチームは、「エンド・ツー・エンド」、すなわち入力電力に対する出力電力の試験は、さまざまなシステムが設計されたという条件の下での基準と関係なく、「すべて」のワイヤレス・パワー伝送システムを測定し比較した結果を得る方法であると結論しました。これは、同一規格の「範囲内」でシステムを比較するためには正しい方法ですが、「異なる」規格を満たすように設計されたシステムを比較するためには無意味であり、メリットもありません。

残念ながら、慎重に設計されたシステムは、事後に課された規定と連携しません:むしろ、うまく設計されたシステムは、それらが設計された通りの結果を生み出します。システムを設計するときにはトレードオフがあるという格言を前提にして、コロラド州立大の試験を見ると、なぜ、試験した2つのシステムの効率の結果を並べて比較することができないのか、が分かります ―― それらは、異なる特性を目標にして設計されていました!

効率が問題です・・・しかし、正確に測定され、報告されなければなりません

コロラド州立大の報告書は、彼らが自己の利益に向けてゆがめたこの結果に既得権を持っているので、WPCが後援するQi / A4WPの効率試験において、誤りと誤解を招く多くの仮定に基づいています。より重要な悪質な仮定のいくつかをここに列挙します:

  1. Rezence規格の代表として使われたEPCの無線充電キットは、Qi規格の電力負荷5 Wよりもはるかに大きい最大38 Wまでの電力を供給するように設計されました。「すべて」のパワー・エレクトロニクス・システムは、それらが設計されているよりも低い電力で、より低い電力変換効率を示すことを考えると、報告された効率の値は、EPCのシステムの変換効率の真の能力を反映していません。EPCのシステムは、A4WPベースの部品を使っていますが、A4WPに準拠していません。
  2. EPCのキットに使われた受電(受信)基板は、より高い出力電圧に対して調整されています。このため、より大きな電流(コロラド州立大の試験では設計電流の2倍)で駆動することは、その受電基板と給電(送信)システムの両方にマイナスの影響を与えることになるでしょう。
  3. この試験における効率の比較は、16 W定格で、定格電力の1/3で動作する複数の負荷コイルのセットを用いて行われました。もし、この比較がA4WPクラス2の給電コイル(定格10 W)を使って実施されたら、EPCのシステムの効率は、はるかに高かっただろうと思います。
  4. 最も顕著なのは、この試験では、EPCのシステムの送信コイルと受信コイルとの間の距離が、A4WP規格で規定された距離を超えて離され、システムが不利な場所に置かれたことです。Qiベースのシステムは、固定された位置合わせを使い、コイルのセットの間を非常に厳しく十分に定義された間隔にしているということは見逃せません。A4WP規格は、「ユースケース(適用例)」のシナリオに基づいて、コイルのセットの間の具体的な距離を規定しています。効果的に配置されたA4WPのシステムの距離を長くすることは、規格の範囲よりも離れた場所に置いて、それが設計され、試験されたことになります。

良く考えてみると、Qi側が出資した試験は、変換効率を定義し測定する必要性についての基本的な良い質問を提起します。さまざまなワイヤレス・パワー規格の構造の違いがあるため、規格内でのシステムの比較は単純で簡単に定義できますが、異なるワイヤレス・パワー規格で設計されたシステムの規格の間の比較は、適切に定義され、はるかに正当な配慮が必要であり、これが、信頼に値する比較結果になるということです。

全動作範囲にわたって単純な「エンド・ツー・エンド」で試験をした効率を報告するとき、Qi規格対Rezence規格の場合には、さらに、消費者の使い勝手などの付加的な性能基準を考慮しなければなりません。効率は、ワイヤレス・パワー規格の仕様の想定範囲内で測定されなければなりません:フェラーリの最高速度は米フォード車のトラックの最高速度と比較されるべきではないように・・・。すなわち、トラックは、速度を犠牲にして、荷物を運搬するために設計されたものだからです。

「客観性」の必要性・・・または、少なくとも「コントロールされた主観」の手段

「コントロールされた主観」を持つために、各ワイヤレス・パワー規格の範囲内での効率の規格とそれを測定する手段は、規格の範囲内だけでなく、異なる規格の下で設計されたシステムを比較するときに、システムの比較に先立って必要とされます。異なる規格の下で開発された任意の特性パラメータを比較するための状況を作るために、はっきりと明記された設計パラメータが、システムを比較するときに提供され、議論されなければなりません。

WiPoシステムの採用を通じて、消費者は、使い勝手や信頼性などのこの他の設計基準に関連して、効率の相対的重要性を決定するでしょう。ただし、忘れてはいけません。広く受け入れられるために最も重要な効率の比較は、従来のACアダプタに対するワイヤレス・パワー伝送システムでしょう ―― これは市場シェアを獲得するための「幸運のリング」になります。

間違いなく、電力伝送システムの間で効率を比較するための世界標準の方法は必要ですが、ワイヤレス・パワー・システムの設計条件を規定する異なる基準がある限り、システム効率を測定する方法を慎重に構築する必要があります。そして、さらに多くの精査は、その試験結果が報告される方法が与えられるべきでしょう。現在、2つのワイヤレス・パワー規格、すなわち、QiとRezenceは 、 共通の「敵」が壁のコンセントであるという事実を尊重しなければなりません。この2つの規格は、私たち消費者が、最終的にコードを切断することができるように、真剣に、そして創造的に考え続けなければなりません。