96~150 Vのモーター・システム向けのGaNベースの3相インバータ・リファレンス・デザイン:EPC9196
GaNの話 – Federico Unnia
6 10, 2025
96~150 Vのバッテリー・システム向けの小型で高効率なBLDCモーター駆動回路の設計には、特有の課題があります。パワー段は、中程度の電圧を高速スイッチングと低導通損失で処理すると同時に、丈夫な電流検出機能と保護機能も備えていなければなりません。これまで、この動作のポイントに直接対応する既製のリファレンス・デザインは存在しませんでした。
EPC9196は、このギャップを埋めるものです。これは、eGaN® FETのEPC2304を搭載した25 ARMSの3相インバータ用評価基板で、次のようなモーター制御用途向けに開発しました。
- AGV(無人搬送車)や移動ロボットのステアリング駆動装置
- 低~中出力のロボット用アクチュエータやサーボ・ジョイント
- 小型電動プラットフォーム用トラクション・モーター
アーキテクチャの概要
EPC9196は、GaN FETのEPC2304(定格200 V、最大オン抵抗RDS(on) は5.0 mΩ)を使った3つのハーフブリッジ・パワー段、ゲート・ドライバ、電流と電圧の検出、熱と過電流の保護機能を搭載しています。主な電気的な仕様は次のとおりです:
- 入力電圧範囲:30 V~170 V
- 出力電流:1相当たり最大25 ARMS(35 Apk)
- スイッチング周波数:最大150 kHz
- dv/dtの最適化:EMI(電磁干渉)雑音とモーター雑音を低減するために10 V/ns以下
- 相電流検出帯域幅:ACS37003ベースのフロントエンドを使ったときに400 kHz
- 電圧と温度のモニター:全相、直流レール、温度センサーAD590搭載
図1:BLDC駆動のアプリケーション例におけるEPC9196基板の回路ブロック図
25 ARMSが重要な理由
多くのモーター駆動用途 ―― 特に自律システム ―― では、25~400 ARMSの範囲の電流が必要です。市販のリファレンス・デザインの多くは、15 A以下の低電圧システムまたは50 Aを超える大出力駆動に焦点を当てています。EPC9196は、25 ARMSの能力を備え、96~150 V動作に最適化した最初のリファレンス・デザインです。
これによって、設計者は、大きい開発プラットフォームや検証されていないカスタム設計に頼ることなく、代表的な動作条件下でGaNベースのソリューションを評価できます。
デバイスの選択:EPC2304
QFNパッケージ、200 V定格、そして同じクラスで最も低いRDS(on)に基づいてEPC2304を選択しました。主なデバイス特性は以下のとおりです:
- RDS(on):最大5.0 mΩ
- ゲート電荷QG:標準22.3 nC(VGS=5 Vのとき)
- 性能指数(RDS(on) × QG):導通損失が最小で高いスイッチング周波数に最適
- 熱設計:ヒートシンクの取り付けを容易にするための上面冷却
EPC9196 には、1/4ブリック・サイズのヒートシンクの取り付け機能が含まれており、適切な誘電体分離と熱特性を保証するために、台湾のT-Global Technologyおよび独ヘンケルのBergquistの熱伝導材料(TIM)で検証しています。
熱の特性評価
60 kHzのPWM(パルス幅変調)、150 Vの直流入力、自然対流冷却での連続動作時:
- ヒートシンクなし:ΔTが50℃以下のときに1相当たり8.5 ARMS
- ヒートシンクあり:ΔTが50℃以下のときに1相当たり13 ARMS
- 短時間過渡時:1相当たり25 ARMSに対応

図2:GaN FETのEPC9196の温度上昇は、定常状態(左)と10秒間の過渡状態(右)において周囲温度(26℃)の関数として表されます。
システム・レベルの統合
EPC9196は、40ピンのインタフェース(EPC9147xシリーズ)を介して標準コントローラのプラットフォームをサポートし、以下との素早い組み合わせを可能にします:
- 米テキサス・インスツルメンツのTMS320F28379D(LaunchPad)
- スイスのSTマイクロエレクトロニクスのNUCLEO-G431/474シリーズ
- 米マイクロチップ・テクノロジーのdsPIC33
- ルネサス エレクトロニクスのRA6T2
電圧と電流の検出信号は、3.3 Vの論理レベルにスケーリングされ、ほとんどの組み込みADCと互換性があります。過電流保護は、ハードウエアによる強制設定(ジャンパ経由)またはソフトウエアによるモニターが可能です。
図3:モーター駆動用インバータとして構成されたEPC9196の接続図
アプリケーション・ノート
- 統合した検出回路によって、FOC(フィールド・オリエンテッド制御)またはSVPWM(空間ベクトル・パルス幅変調)の制御方法に適した高速フィードバック・ループ帯域幅が可能になります。
- GaN FETの逆回復ゼロの特性によって、デッドタイムを50 ns以下に最小化することができます。
- 基板のレイアウトは、低ループ・インダクタンスとクリーンなスイッチング・ノード遷移をサポートしており、スコープによる捕捉によって検証されます。
設計へのアクセス
EPC9196は、評価および開発に利用できます。設計ファイルは、EPCの製品ページから入手できます。
96~150 VクラスのGaNベースのモーター制御システムを開発しているチームにとって、EPC9196は、迅速なプロトタイピングと性能のベンチマークのための検証済みで文書化したプラットフォームを提供します。
図4:相電流とスイッチング・ノード電圧
GaNベースの設計プロセスをサポートするため、EPCは一連のツールと専門家によるガイダンスを提供しています。レイアウトのヒント、熱設計のアドバイス、シミュレーション・モデルなど、リソースGaN First Time Rightを活用して、初回から確実に成功を目指しましょう。ご質問がありましたら、当社の技術者が喜んでお手伝いします ―― GaNのエキスパートに聞くに質問すれば、あなたのアプリケーションに合わせた個別のサポートを提供します。
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