5 kW、4レベルのトーテムポールPFCコンバータによる高効率サーバー電源の駆動
GaNの話 – Marco Palma
10 22, 2025
概要
サーバーやデータセンターの事業者が、より高い効率と電力密度を求めるにつれ、電源設計者は、窒化ガリウム(GaN)技術に、ますます注目するようになっています。GaNは、スイッチング速度が速く、損失が少なく、デバイスの実装面積が小さいため、シリコンでは実現不可能なシステム・アーキテクチャを実現できます。
図1に示すEPC91107KITは、5 kW出力の評価プラットフォームであり、200 VのGaN FETであるEPC2304を4レベル・トーテムポール型力率補正(PFC)コンバータに活用することで、優れた効率とOpen Compute Project(OCP)規格への準拠を実現する方法を示しています。このブログでは、このソリューションの設計理念、ハードウエア、制御方針、そして実験的な性能について説明し、GaNがデータセンター電源の電力密度を新たなレベルに引き上げる理由を示します。
図1:5 kW、4レベルのトーテムポールPFC評価基板EPC91107KIT
なぜマルチレベル・トーテムポールPFCなのか?
トーテムポール型PFCは、データセンターにおける高効率AC-DCフロントエンドの最高の基準として、すでに採用されています。従来の2レベル設計からマルチレベル・フライング・コンデンサ構成に移行することで、スイッチング損失、デバイス・ストレス、入力電流歪みを、さらに低減できます。この回路ブロック図が図2です。
EPC91107では、4レベル構造によって、PFCに必要なインダクタンスを約130 µH(2レベル)から、わずか13.8 µHに低減できるため、市販の小型なコイルを使えます。これは、より高い電力密度と、より高速な過渡応答に直接つながります。
図2:マルチレベルPFCコンバータの回路ブロック図
Open Rack V3(ORV3)への挑戦に向けて
OCPのOpen Rack V3 (ORV3)仕様では、サイズに厳しい制約が設けられています:電源は40 mm×70 mm×630 mmの筐体内に収まらなければなりません。この寸法内で5 kWの出力を実現するには、設計者は以下のスペースを慎重に確保する必要があります:
- バルク・コンデンサ:垂直の短いコンデンサは、組み立ての複雑さを軽減し、電気的/機械的な要件を満たします。
- EMI(電磁干渉)雑音フィルタ:雑音の結合を最小限に抑えるために、コンデンサの近くの「静かな領域」に配置します。
- コンバータ段:出力の近くに配置され、冷却経路が最適化されています。
冷却は、PSU(電源ユニット)の長さ全体にわたる強制空冷、または側壁の熱拡散によって実現され、大きな半導体を基板の端に押し出して熱の処理が容易になります。
EPC91107KITは、4枚のモジュラ基板で構成されています:
- EPC91107Mマザーボード:EMIフィルタ、突入電流リミッタ、バルク・コンデンサ、ハウスキーピング電源。
- EPC91107P GaNパワー基板:複数のFET(EPC2304)、絶縁ゲート・ドライバ、測定回路を備えたコア4レベル・トーテムポール段。
- EPC91107F フライング・コンデンサ基板:フライング・コンデンサを搭載し、コントローラ用インタフェースを提供。
- 4. 米マイクロチップ・テクノロジーのdsPICコントローラ・カード:高分解能のPWM(パルス幅変調)信号の生成、PLL(位相同期ループ)同期、フィードバック制御を提供。
わずか92.5 mm×38.5 mmのGaNカードには、高周波および低周波のブリッジとフィードバック回路が統合されており、プリント回路基板の面積が最小限に抑えられています。
図3:EPC91107KITは、電源、コンデンサ、制御用の4個のモジュールを組み立てて構成
制御の方針
EPC91107は、4レベル・アーキテクチャに適合した従来のPFC制御ループを採用しています。
- 位相同期ループ(PLL)は、交流電源周波数に同期し、正弦波リファレンスを生成します。
- 外側の電圧ループは、ゼロ次ホールド(ZOH:zero-order hold)機能を使って、ピーク電流の基準を計算し、歪みを最小化します。
- 内部の電流ループは、測定した電流を基準と比較し、フィードフォワード・スケーリングによって動的応答を実現します。
- 3つの補完的なPWMチャネルsが120度の位相シフトされ、GaNデバイスを対称的に駆動します。
特に、フライング・コンデンサの電圧は、コイルの連続電流によって自動的にバランスされるため、アクティブなバランス回路は不要になります。
図4:PLL、電圧ループ、電流ループを備えた4レベルPFCの制御回路ブロック図
熱に関する考察
評価キットは、ヒートシンクなしで提供され、初期評価では強制空冷を使います。ただし、高負荷条件では、EPCは以下のことを推奨します:
- FET上に向けたファンによる背面冷却。
- 熱伝導を向上させるTIM(熱伝導材料)を備えたヒート・スプレッダ。
- EPCは、デバイスの界面には台湾T-Global TechnologyのTG-A1780(17.8 W/m·K)TIM を、ヒート・スプレッダにはTG-A620 (6.2 W/m·K)を推奨しています。
このハイブリッドのアプローチは、電気的絶縁性、機械的コンプライアンス、および熱伝導性のバランスをとります。
実験的検証
EPC91107のテストでは、設計が業界標準を満たし、それを上回る能力があることが確認されました:
- 効率:交流240 V入力、直流400 V出力において、60~100%負荷で98%以上
- 入力THD(全高調波歪率):40~100%負荷で5%以下、OCP(Open Compute Project)のM-CRPS要件に準拠
- 力率:負荷全域でほぼ1、ORV3の期待値を上回る
- 波形:5.18 kWで入力電圧に追従するきれいな正弦波入力電流によって、制御精度を確認
図5:効率は98%を超え、iTHD(総合高調波歪率)は、ほとんどの負荷条件で5%以下を維持
サーバー電源の関連性
EPC91107は、ORV3準拠のサーバー電源の可能性を示すために開発しました。GaN FET、マルチレベル構成、そして注意深い熱管理を組み合わせることで、設計者は以下のことが可能になります:
- PFCのコイルを90%小型化(130 µH→13.8 µH)。
- OCP準拠を維持しながら、システムの体積と重さを削減。
- 余裕をもってチタン・クラスの効率を実現。
- 進化するAI、HPC(高性能コンピューティング)、クラウド・インフラの需要に対する将来性。
図6:50 Hzと60 HzでVIN=230 VRMS、VOUT=400 VDCで動作したときの測定効率(ハウスキーピング電源を含む)
結論
EPC91107KITは、単なる評価基板ではありません ―― 将来のサーバー電源設計の基準となる製品です。GaN FETのEPC2304をベースに構築した5 kW、4レベルのトーテムポールPFCを示すことで、GaNがいかに比類のない効率、密度、そしてOCP規格への準拠を実現するかを実証しています。
次世代のデータセンター電源を設計する技術者にとって、EPC91107は、GaNがシリコンの単なる代替品ではなく、より小型、高速で、発熱が少なく高効率なシステムを実現するための鍵であることを証明しています。
設計資料:
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