eGaN FETとICが手術用ロボットの精密な制御を可能に GaNの話 – Michael de Rooij, Ph.D. 11 14, 2018 手術用ロボットを使った最小限の侵襲的手術は、次のレベルの精度を実現しようとしている外科医に前例のない制御手段を提供し、それによって、患者へのリスクや外傷を減らし、回復を早めます。非常に繊細な作業を実行するために、手術用ロボットに必要な自由度(DOF:degrees of freedom)や器用さを与えるアーム、関節、ツール制御などのさまざまなロボットの付属品を制御するために多くのモーターが必要になります。モーター制御回路の重さや大きさは、手術中にロボットの付属品を操作するモーターの大きさに直接影響するため、このようなロボットの設計では重要な要素になります。 ロボット手術に適したモーターは、3相ブラシレスDC(BLDC)モーターです。これらのモーターは、定格電力に対して小型で、精密に制御でき、電気機械的な高効率が得られ、適切に制御すれば最小限の振動で動作します。24 V〜48 Vの範囲にあるモーター電圧の選択は、電力伝導体の厚さや重さと、最適な性能と精密さを実現するための絶縁の厚さや剛性とのバランスが決定的要素となります。 これらのモーターは、ほとんどの場合、3相のインバータ回路で駆動され、従来はMOSFETが使われていました。MOSFETよりも、はるかに高速にスイッチングするeGaN FETの出現によって、今では、はるかに高い周波数で動作するインバータを設計することが可能になりました。これによって、より高い電気的な効率を得ることができます。 より高い周波数で動作することができることは、モーターのための制御帯域幅を高められるだけでなく、多くの利点があります。これによって、モーターを制御できる精度が向上します。加えて、周波数が高いことによって、より高い制御精度を利用することができるために、極めて重要な機械的振動を減少させるか、または、無くすことさえできます。 出展:Globalsources.com ブラシレスDC(BLDC)モーター より高い周波数で動作しているときに、モーターが発熱することを防ぐために、システムに対する損失が無視できるほどの小型フィルタを追加することができます。この組み合わせによって、MOSFETを使って設計されたシステムよりも優れた電気機械的な効率と性能が得られ、さらに、EMI(電磁干渉)雑音の発生を低く抑えて規制規格への準拠を容易にします。 モーターのサイズと定格電力は、取り付け位置や割り当てられた仕事によって異なります。例えば、アームを操作するには、より高出力のモーターが必要であり、小型精密ツールを操作するには低出力のモーターが必要です。したがって、モーターの定格電力は、モーターに電力を供給しているインバータ駆動の定格電力に直接影響します。 手術用ロボットのモーター駆動用eGaN FET 図3に示すように、標準的なインバータは、3組のハーフブリッジで構成され、各出力はモーターの各相に接続されています。理想的には、PWM(パルス幅変調)技術を使ってFETをスイッチングし、振動を最小化するために正弦波で変調します。重さとサイズの制約から、インバータのFETを冷却するためにヒートシンクを使うべきではありません。 モーターの電圧定格が24 V〜48 Vの範囲にある場合、eGaN FETのドレイン-ソース間電圧VDSの定格は40 V〜100 Vの範囲で選ぶことができます。電力の要件に応じて、最小1 Aから最大60 Aの連続電流定格にすることができます。電流定格または電圧定格に関係なく、駆動回路の基本的な構成と動作は同じです。 eGaN FETは、40 V〜100 Vの電圧範囲で、ハード・スイッチングの性能指数(FOM:Figure of Merit)がMOSFETの1/3〜1/4と小さく優れているため、手術用ロボットのモーター駆動用に最適です。このため、eGaN FETベースの駆動回路は、より高い効率、より高い周波数、したがって、より高い精度で動作することができます。 図3:フィルタ付きの一般的な3相モーター駆動 図4:手術用ロボットのモーターに適したeGaN FET 表1に示すように、モーター駆動では、ディスクリートのeGaN FETというオプションの幅広い選択肢に基づいて実装することができ、モーターの電力定格によってFETの電流定格が決まります。MOSFETを超えるeGaN FETの利点の1つは、パワー段のモノリシック化など、アクティブ・デバイスに対する面積の縮小です。この機能は特に、ツールを操作する非常に小型のモーターに対して役立ちます。集積化した複数のeGaN FETの選択肢を表2にまとめました。 各eGaN FETに対して、ハーフブリッジの開発キットを用意しています。これらの開発キットは、性能評価に使うためのモーター駆動回路を迅速に組み立てるために利用できます。 eGaN FETは、信頼性に関する実証された実績を持っています。それは、AEC認定部品も含めてサポートされています。 表1:手術用モーター駆動回路用ディスクリートeGaN FET 型番 構成 VDS 最大V 最大RDS(on)mΩ @5VGS 最大連続IDA EPC8004シングル401104 EPC2014Cシングル401610 EPC2049シングル40516 EPC2015Cシングル40453 EPC2030シングル402.448 EPC2024シングル401.590 EPC2035シングル60451.7 EPC2031シングル602.648 EPC2020シングル602.290 EPC8002シングル654802 EPC8009シングル651304 EPC2039シングル80256.8 EPC2029シングル803.248 EPC2021シングル802.590 EPC2037シングル1005501.7 EPC8010シングル1001604 EPC2036シングル100731.7 EPC2007Cシングル100306 EPC2051シングル100251.7 EPC2016Cシングル1001618 EPC2001Cシングル100736 EPC2045シングル100716 EPC2032シングル100448 EPC2022シングル1003.290 EPC2203AEC シングル80801.7 EPC2212AEC シングル10013.518 表2:手術用モーター駆動回路向けの集積化したモノリシックeGaN FET 型番 構成 VDS 最大V 最大RDS(on)mΩ @5VGS 最大連続IDA EPC2107同期ブート付きデュアル1003901.7 EPC2108同期ブート付きデュアル602401.7 EPC2106ハーフブリッジ100701.7 EPC2104ハーフブリッジ1006.830 EPC2103ハーフブリッジ805.530 EPC2102ハーフブリッジ604.930 まとめ BLDCモーターは、出力に対してサイズが小さいため、手術用ロボットに最適な選択です。eGaN FETは、効率を高められ、動作周波数を高くできることを考えると、正弦波変調のモーター駆動に理想的なデバイスです。モーター制御回路にeGaN FETを使うと、精度を高められるので、モーターの駆動部をより小型にできます。これによって、設計者は、MOSFETの同等のソリューションよりも小型で優れた操作性を備えた手術用ロボットを設計することができます。 Tags: BLDCeGaNGaN FETモーター制御モーター駆動ロボット Michael de Rooij, Ph.D., Vice President, Applications Engineering