GaNの話シリコンを粉砕するために捧げたブログ
窒化ガリウム(GaN)がクルマの電動化をいかに加速するかは、これです ―― ICEからMHEV、そしてBEVへ

窒化ガリウム(GaN)がクルマの電動化をいかに加速するかは、これです ―― ICEからMHEV、そしてBEVへ

8 24, 2023

過去30年にわたり、自動車エレクトロニクスは、目覚ましい進化を遂げ、従来の内燃エンジン(ICE:internal combustion engine)からバッテリー駆動の電気自動車(BEV:battery electric vehicle)の登場に移行しました。この進歩は、車両の駆動方法を変革しただけでなく、電力分配アーキテクチャと半導体部品にも大きな変化をもたらしました。このブログでは、ICEからマイルドハイブリッド(MHEV)、BEVまで、この進化の3つの主要な段階を検証し、自動車の展望を形作る際の低電圧電力分配の役割を探ります。

第1段階:内燃エンジン(ICE)

初期の自動車エレクトロニクスは、比較的単純で、大抵の場合、機械システムが主流でした。1990年代と2000年代のICE車両は主に、電子点火、ラジオ、電動パワー・ウインドウや電動シートなどの機能のために最小限の連続電力を消費していました。エンジンの瞬間始動のための電力需要は約12 kWがピークでした。この時代には、バッテリーとスタータ・モーターを直接接続するだけで、点火に必要な出力を十分に高めることができました。

第2段階:マイルドハイブリッド電気自動車(MHEV)

マイルドハイブリッド技術の出現は、電動化への道の始まりとなりました。電動モーターが組み込まれており、アイドリング・ストップ機能が可能になり、徐々に推進力が補助されます。ホンダのインサイトやトヨタのプリウスなどの著名な自動車は、出力と燃費の両方を向上させる電気モーターの可能性を実証しました。これらの進歩に伴って、電力要件も急増し、シンプルなアイドリング・ストップ・システムの3 kWから高度なプラグイン・ハイブリッドの約30 kWまで増加しました。

この電力ニーズの増加によって、従来の12 Vの電気システムから、より強健な48 Vシステムへの移行が必要になりました。電圧が高くなったことで、電気駆動装置、エアコン、燃料や水のポンプ、パワー・ステアリング、インフォテインメント・システムなどのさまざまな装置に電力を供給できるようになりました。48 Vの電力分配システムに向けたこの進化によって、ワイヤリング・ハーネスの負荷が大幅に軽減され、より費用対効果の高い電力供給が可能になります。

第3段階:バッテリー駆動の電気自動車(BEV)

現在の自動車業界は、バッテリー駆動の電気自動車(BEV)の台頭によって、これが優勢になっています。これらの自動車は電気のみで駆動されるため、すべての機能は電気システムによって継続的に電力供給されなければなりません。個々の電気負荷の電力要件は、アイドリング・ストップ機能を除いたMHEVと同様ですが、BEV特有の課題は、キャビンの電気的な暖房とバッテリーの温度管理の追加の必要性です。BEVは通常、約3 kWの電力を必要とします。

MHEVと同様に、BEVも効率と費用対効果の点で、48 Vの電力分配システムの恩恵を受けます。ただし、BEVの電源システムと高電圧トラクション・ドライブ(通常は400 Vまたは800 V)を統合するには、安全性を確保するために電気的絶縁が必要です。この絶縁は、絶縁型電源と、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)のトランジスタなどの高度な変換技術を組み込むことで実現できます。

48 Vの車載システムにGaNを使う理由

GaN is Accelerating Vehicle Electrification

GaN FETとICは、従来のシリコン・ベースのソリューションに比べて、明確な利点を備えており、自動車の電力分配システムに必要な高性能パワー・エレクトロニクスのアプリケーションに最適です。48 Vバス・システムの場合、GaN技術によって、効率が向上し、サイズが小型化し、システム・コストが削減できます。

効率:GaNデバイスは、シリコン・デバイスに比べて、オン抵抗とスイッチング損失が小さくなります。これによって、変換効率が向上し、エネルギー損失が最小限に抑えられ、自動車全体の効率が向上します。

より小型なサイズ:GaNデバイスは、従来のシリコン・デバイスよりも本質的にサイズが小さくなります。この小型なサイズによって、より高い電力密度が可能になり、48 Vのアーキテクチャで使われるDC-DCコンバータのサイズと重さが削減されます。加えて、はるかに高い周波数でスイッチングできるため、同じ変換比率で、部品点数を減らすと同時にサイズを半分に減らすことができます。

コスト削減:GaNベースのソリューションによって、設計の複雑さが軽減できます。一例として、従来のMOSFETソリューションでは1相当たり125 kHzであるのに対し、GaN ベースのソリューションはスイッチング速度が速いため、1相当たり250 kHzで動作できます。3 kWで、48 V入力、12 V出力のコンバータでは、スイッチング周波数が高くなることで、5相システムから4相システムに減らすことができ、サイズとコストの両方が削減できます。

新しいトレンドと将来の方向性

効率を高めるための電力分配アーキテクチャに移行した人工知能(AI)サーバーの開発と並行して、自動車の電力分配も同様の進歩を遂げようとしています。領域内の電源アーキテクチャのコンセプトは、小型のDC-DCコンバータを自動車の周囲に戦略的に配置することで、配線システムを合理化し、効率を向上させる可能性を秘めています。このアプローチは、最終的には、低電圧バッテリーを排除し、メイン・バッテリー・システムからの直接電力供給を優先することにつなげることができます。

このトピックに関する詳細な説明については、米Power Systems Design誌の記事「車載エレクトロニクスにおける低電圧配電の進化 – ICEからMHEV、BEVまで」を参照してください。

結論

ICEからMHEV、BEVに至る自動車エレクトロニクスの進化は、電力分配のアーキテクチャと技術に大きな変化をもたらしました。12 Vから48 Vへの電力分配システムへの移行は、マイルドハイブリッドとBEVの両方の電動アシスト自動車の電力需要の増加によって牽引されています。こうした変化によって、GaNトランジスタなどの高度な半導体技術の採用が促進され、より高い効率、より小型のサイズ、そして、より高い費用対効果が得られています。

GaNがクルマの電動化を、どのように加速しているかについて、詳しくはEPC にお問い合わせください.