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電力の再考:データセンターと人型ロボットのためのGaNの革命

電力の再考:データセンターと人型ロボットのためのGaNの革命

1 13, 2026

モナコで開催された独Bodo’s Power SystemsのWide Band Gap Forumにおいて、EPCの共同創立者でCEO(最高経営責任者)のAlex Lidow(アレックス・リドウ)は、GaNに関する議論の方向性を決定づけ、パワー半導体における50年の経験に基づいて、窒化ガリウム(GaN)の大きな利点を強調しました。米テキサス・インスツルメンツ、米Navitas Semiconductor、独インフィニオン・テクノロジーズ、東芝、独フォルクスワーゲン、三菱電機の専門家らと共に講演し、AI(人工知能)データセンターや人型ロボットから自動運転車やLidar(光による検出と距離の測定)に至るまで、低電圧・高周波システムにとってGaNが優れた選択肢であると位置付けました。高電圧分野ではSiCが依然として主流ですが、GaNがすでに負荷点(POL:Point-of-Load)電源をはじめとするさまざまな分野を変革しつつある費用対効果の高い技術であると強調しました。

Lidowは、GaNの重要なコストの交差を指摘し、EPCが2014年に初めてシリコンと同等の性能を予測し、2015年にはそれを達成しと述べました。彼は「チップ・サイズのマジック」について語りました:GaNデバイスは、同種のシリコンMOSFETに比べて、サイズが約1/10と小型です。このため、ウエハーは高価でも、最終製品は全体的に安価になります。この特徴によって、特に高性能が求められる低電圧領域において、約10年前から多くの人々がGaNを利用できるようになりました。

Lidowは、最初の100 VのGaNデバイスが20年前に製品化されたのは、ユーザーがより高速で小型のソリューションを最初に求めていた分野だったからですと話しました。この戦略は今も健在です:「第7世代では今、より高いMHzで動作するPOL(負荷点)コンバータに深く関わっています。そして、低電圧化への移行に伴って市場規模は拡大しています」。48 Vのデータセンター・バックプレーンが最も急速に成長している市場機会の一つですと強調しました。

デバイスのアーキテクチャについて、Lidowはエンハンスメント・モード(eモード)GaNを中心とした低電圧統合を確認しました:パワー・スイッチングではモノリシックeモード設計が好まれ、カスコードや高電圧での直接駆動に比べて統合が合理的です。

Lidowは、EPCのパッケージングの歩みを振り返り、初期のチップスケール・デバイスは超低インダクタンス、低抵抗、優れた熱特性を実現していたものの、その脆さと硬い端子が最終的に採用を阻んだと指摘しました。これらの問題は、PQFNパッケージへの切り替えによって解決されました。密接な内部レイアウトによって寄生成分が低減され、裏面には強力な熱経路が確保され、ワイド・バンドギャップにおける唯一の真の摩耗モードである熱機械的ストレスをパッケージ自体が取り込むうようになりました。

Lidowによると、ワイド・バンドギャップ・デバイスの信頼性を決定づけるのは、丈夫な熱機械設計です。適切に設計したとき、GaNの強固な原子結合によって、過負荷への対応力が非常に高く、優れた製造技術によって外部欠陥も最小限に抑えられます。加えて、これらの特性を重要な技術開発と関連付けて、GaNの社会的影響力の高まりは、Lidar(光による検出と距離の測定)の実現、AIインフラの電力供給、ロボットのモーターの駆動といった分野に顕著に表れていると指摘しました。

Lidowは、データセンターのソリューションとして、厚さがわずか8 mmで98%の効率が得られる800 V入力、12 V出力、6 kWのコンバータを示しました。このコンバータは、メガヘルツの速度でインタリーブした8レベルのGaNによって実現しています。電圧共有構成では、複数のコイルを並列に接続することが容易になります。高電圧の場合は直列接続が、パワー・スケーリングの場合は並列接続が効果的です。Lidowは、この新しいスタッキング方式に合わせて、従来の設計を見直すよう呼びかけました。

Lidowは、第7世代デバイスは1平方ミリメートル当たり180万アンペアという銅を超える電流を処理でき、システムに対する新たな考え方が求められることを指摘し、GaNの成熟度を強調しました。パネリストたちは、AIの進化によってパワー・システムがメガワット規模へと進む中、低電力密度領域ではGaNが依然として比類のない存在であることに同意しました。コストの均衡化が進み、ラック・レベルの効率向上も視野に入ってきたことから、LidowはGaNが加速し、止められない軌道に乗っていると見ています(図1)。

パネル・ディスカッションの講演者
図1:パネル・ディスカッションの講演者

GaNパワー段が次世代人型ロボットを牽引

AIと自律システムが技術の限界を押し広げる中、まるで生きているかのように動く人型ロボットという新たなタイプの機械が開発されています。GaNは、これらのシステムに必要な小型で強力な電力を提供しています。

EPCのCEOのAlex Lidowは、ドイツのミュンヘンで開催されたBodoのイベントの基調講演で、GaNがロボット革命の鍵となると述べました。「20年後、私たちはこの時代を振り返り、AIとロボットの時代と呼ぶでしょう。GaNは性能において真に優れています」と語りました。

アナリストたちによると、人型ロボット市場は、ますます高度な統合と効率化に対応できるコンピューティング技術とパワー・エレクトロニクス技術への需要に牽引され、今後数年間で大きく成長すると予想されています。特に先進国では、少子高齢化と出生率の減少が進み、自動化された労働力の必要性がますます高まっています。人型ロボットは、産業分野やサービス分野における労働力不足の現実的な解決策として浮上してきています。現在、人型ロボットの普及を阻む要因は、コストに加え、ハードウエアだけでなく、プログラミング、適応、そしてさまざまな予期せぬ状況からの学習能力などのソフトウエアに関わる設計上の課題も存在します。これらの課題を克服することで、ロボットを日常生活や仕事に組み込む社会が実現可能になります。

モーターは、あらゆるロボットのパワー・エレクトロニクスを支える要素です。ブラシレスDC(BLDC)モーターは、ロボットの体のさまざまな部位に力を供給します。標準的なロボットには、40個以上のモーターが搭載されており、それぞれが指や膝など、異なる部位に力を供給します。これらのモーターに必要なエネルギー量は、その動作によって異なります。こうした進歩は、非常に高効率で小型、そして信頼性の高い高度なパワー・エレクトロニクスによって可能になりました。ここに、GaNパワー・トランジスタと集積回路(IC)が登場します。

業界分析で引用されている米バンク・オブ・アメリカの2025年レポートによると、人型ロボットの年間販売台数は2030年までに100万台に達し、2060年までに実稼働台数は驚異の30億台に達すると予測されています。これは、地球上の人間のほぼ3人に1台に相当します。この爆発的な成長は、米ゴールドマン・サックスが2035年までに世界の人型ロボット市場が380億ドル規模に拡大し、特に人間の作業員を危険な作業から保護するために、世界中で300万台から2700万台が導入される可能性があるという予測とも一致しています。高齢化、労働力不足、AIの進歩を背景に、これらの予測は、産業、サービス、そして消費者向けアプリケーションにおける多用途人型ロボットのプラットフォームの需要の高まりを浮き彫りにしています。

GaNは、システムの小型化、電力損失の低減に貢献し、そして極端な温度環境下でも優れた動作を実現します。窒化ガリウムは主に、人型ロボットにおいて、回転アクチュエータ、器用な手先、リニア・アクチュエータ、インテリジェントな知覚機能、AIおよび制御システム、バッテリー、充電器などに使われています。最新のGaNパワーICには、FET、ドライバ、保護回路が内蔵されています。これによって、個別のMOSFETでは困難なロボットの腕や手に向けたプラグ・アンド・プレイ型アクチュエータ・モジュールの設計が容易になります。

現代のモーター駆動アーキテクチャにおけるGaNの利点

ほとんどの人型ロボットは、GaNの性能に理想的な電圧48~60 Vで動作するブラシレスDC(BLDC)モーターに依存しています。これらのモーターは、重さと発熱を最小限に抑えながら、高いトルクと素早い応答性を実現しなければなりません。

従来のシリコンMOSFETは丈夫ですが、スイッチング損失とボディ・ダイオードの逆回復が大きいことが、これらの電圧では制限要因になります。MOSFETベースの駆動では、相補型スイッチ間に挿入される制御デッドタイムによって、シュートスルー(貫通)が防止されますが、その期間中はボディ・ダイオードまたはチャネルの導通が支配的になるため、歪みと損失も増加します。MOSFETベースのモーター駆動では、デッドタイムを長くするとダイオード関連の損失が低減されるとよく考えられています。実際には、デッドタイムを長くしても、逆回復は防止されません:逆回復は、位相転流中のモーター電流の方向に応じて、デッドタイム期間の後に、ハードスイッチング遷移中にのみ発生します。この結果、デッドタイム中に不要なボディ・ダイオード導通が発生し、損失が増加して効率が低下します。一般的な設計では、デッドタイムに交流サイクルの最大6%が消費されることがあります。

GaNデバイスは、逆回復ゼロと超高速スイッチングを両立しているため、設計者はデッドタイムをわずか数10ナノ秒まで安全に最小化することができ、デッドタイムに起因する歪みと損失を大幅に低減すると同時に、シュートスルーを防止できます。BLDCモーターを従来の20 kHzという制限ではなく、最大100 kHzの周波数で動作させることで、トルク応答、小型化、信頼性において、目に見えるほどの改善が得られます。

電解コンデンサからセラミック・コンデンサへ

高周波動作のあまり知られていない利点の一つは、大型で信頼性の低い電解コンデンサを小型で信頼性の高いセラミック・コンデンサに置き換えることができることです。電解コンデンサは温度上昇によって劣化し、移動ロボットでよく見られる振動や機械的ストレスによって故障する可能性があります。GaNは高周波スイッチングを可能にするため、技術者は、より小型・軽量、そして、より耐久性が高く、高温環境でも優れた性能を発揮する駆動回路を設計できます。

GaNパワー・モジュールの進化

EPCは、ロボットを使い始めたばかりの人々向けにチップスケールのGaNハーフブリッジ・モジュールを製造することから、この分野に参入しました。その成功を受けて第2世代を開発し、QFNパッケージで提供することで、使いやすさが向上し、発熱も、より管理できるようになりました。Lidowは、「モーター駆動用途のほとんどは小規模で、エンジニアリング集約型です」と述べています。技術者は、チップスケール・デバイスを扱いにくいという理由で好みません。

技術者が、ロボットの腕、肩、手首などのアクチュエータにこれらのモジュールを使い始めると、その性能と有用性の高さから、広く採用されるようになりました。実際、今日では、多くの人型ロボットの設計において、手足のモーターにGaNベースの駆動回路が使われています。これらの駆動回路は、置き換える予定のMOSFET基板よりも小型であることが多いにもかかわらず、同等かそれ以上の電力を供給します。

EPCは、この成功を基に、3つのハーフブリッジを1つの熱効率の高いパッケージに収めた3相パッケージを開発しました。この構成は、ブラシレスDCモーターの標準的な3相設計と同様なので、基板の小型化と設計の簡素化につながります。デバイスの背面は接地電位になっているため、ヒートシンクを絶縁層なしで直接取り付けることができます。この配置によって、デバイスの熱効率はさらに向上します(図2)。

EPC33110の回路ブロック図
図2:EPC33110の回路ブロック図

EPC33110は、モノリシックGaNハーフブリッジにゲート・ドライバを統合した高性能3相モーター駆動モジュールで、ドローン、ロボット、人型ロボットの各システムのBLDCモーター向けに設計されています。最大80 Vの入力電圧に対応し、GaN FET当たり8.7 mΩ(標準値)のオン抵抗RDS(on)を実現することで、高効率と高速スイッチングを可能にします。論理レベル入力(3.3 V / 5 V対応)によって制御が単純化できます。面積6 × 6.5 mmと小型なQFNパッケージは、優れた熱特性と高い電力密度を実現できます。このモジュールは、最大100 kHzのPWMをサポートし、1相当たり最大20 ARMSを供給できるため、システムのサイズと重さを削減すると同時に、動的応答性を向上できます。

モーター駆動回路のモノリシック集積化に向けて

GaNの最初のパッケージがシステム密度の大きな進歩であったとすれば、次世代は、集積化を次のレベルへと引き上げることです。2026年に発売予定のEPCの第3世代デバイスは、当社の最新のGaN FET技術を採用し、より小さなスペースに多くの機能を収めています。

各モジュールは、わずか3×3 mmの面積でありながら、最大35 Aの電流を処理でき、過電流保護、過熱保護、シュートスルー防止、低静止電流動作などの安全機能を内蔵しています。このチップは、パッケージ基板に直接熱接続されているため、高電力密度時でも熱を素早く除去できます。

「Trinity(三位一体)」と呼ばれる次の大きなステップは、3つのモーター位相すべてを単一のGaNチップに集積することです。つまり、モーター駆動回路をコントローラとセンサーに接続するだけで済む単一の小型パッケージに収めます。EPCのラボでの初期テストでは、このアーキテクチャによって、クレジット・カードよりも小さな基板から複数のロボット軸を制御できることが示されています(図3)。

EPCのICの進化
図3:EPCのICの進化。第3世代は2026年5~7月に発売する予定。

アプリケーション全体にわたるイノベーションの拡大

この技術は、人型ロボットや協働ロボット向けに設計していますが、当然、他のバッテリー駆動システムにも応用可能です。軽量で高効率なGaN駆動回路は、ドローン、電動自転車、精密な産業オートメーションにおいても同様に貴重です。小型化、高効率化、長寿命化といったメリットは、これらのプラットフォームにもそのまま活かされます。

EPCのモジュール開発の道のりは、GaNイノベーションが最先端ロボットからより広範な市場へと波及していく様子を示しています。「ピラミッドの頂点を選び、そこに本当に優れたものを開発します。そして最終的には、他のすべてのDCモーター用途へと浸透していきます」とLidowは結論付けています。

性能時代の実現

システムの高速化、柔軟性の向上、自律化が進むにつれて、そのパワー段も、それに応じて進化しなければなりません。GaNデバイスは、同等のシリコンMOSFETよりも桁違いに高速にスイッチングできるため、より高い動作周波数を実現でき、損失を低減してシステム全体の効率を向上できます。この高速能力によって、かさばる電解コンデンサを小型で信頼性の高いセラミック・コンデンサに置き換えることも可能になり、小型な人型ロボットやドローンのプラットフォームの軽量化と丈夫さの向上につながります。さらに、GaNは逆回復電荷がゼロなので、ボディ・ダイオードの回復損失と、それに伴う熱ストレスがなくなり、デッドタイムを数100ナノ秒から、わずか数ナノ秒に短縮できます。これによって、歪みが低減し、1アンペア当たりのトルクが向上し、音響雑音も低減されます。GaNは、人型ロボットの関節からドローンの推進システムに至るまで、次世代のモーターを支える最適な半導体技術として注目されています。

この記事は英EE Power誌に掲載されています。

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